プロット作りの練習

クロノヒョウ

① 宇宙防衛隊 ~ダイダイ編~




 宇宙防衛隊の本部が何やらざわついていた。

「隊長、やはりどこを捜しても見つかりません」

 大宇宙に浮かぶ大きな母船の中の部屋。

 そこにかけ込んできた数名の隊員に向かって隊長と呼ばれた男が険しい顔で叫んだ。

「あきらめるな! アイツはまだ死ぬような男ではない! アイツは決してあきらめてはいないぞ!」

 隊長の言葉にその場にいた全員が姿勢を正した。

「ハイ!!」

 突如出現した神出鬼没の巨大宇宙生物とやらの噂を耳にした宇宙防衛隊。

 エース隊員であるジョーがその巨大生物を探しに行ったきり帰ってこないのだ。

 ジョーの捜索は何日にも及んでいたが、いまだにジョーの戦闘機からの信号すら見つからない。

 隊長にカツを入れられた隊員たちはすぐさままたジョーを捜しに広大な宇宙へと散りばった。



「どこだよ、巨大生物とやらは」

 男はあてもなくただ宇宙をさまよっていた。

 神出鬼没だというその生物は噂によると突如現れては大きな口を開け宇宙船ごと丸のみするという。

 今もしも目の前にそいつが現れたら逃げようもないだろう。

 だとしたらもうジョーは。

「ダメだダメだ!」

 男は自ら首を振って自分を奮い立たせている様子だった。

「ん?」

 すると男の前方に小さな惑星が現れた。

 レーダーを確認するも惑星のことは記録にない。

 だがこの大宇宙ではまだまだ未知の星もたくさんある。

 男は休憩がてらその星に降りてみることにした。

 星はオレンジ色をしていた。

 生物が住んでいるような星には見えない。

 男が戦闘機を停め地表に一歩足を下ろした時だった。

「うわっ」

 突如星全体が音をたてて大きく揺れた。

 かと思うとあちらこちらで大地が裂け始めた。

 地面に膝をついた男はそのまま寝転ぶようにして大地にしがみついた。

 丸い星だと思っていたものが形を変えた。

 どこまでも広がってゆくオレンジの大地。

 前後左右に伸びだんだんと形をなしてゆく姿。

 それは、大きな翼を広げたオレンジ色の巨大な鳥だったのだ。

「なんだこれは」

 男がしがみついているのは大きな鳥の顔のそばのようだった。

「くすぐったいな。貴様こそなんだ」

 鳥は少しだけ首を後ろに傾けながら男に話しかけていた。

「まさか、お前が巨大宇宙生物か?」

 男が聞くと鳥はゆっくりと翼を閉じて静止した。

「ああ、そう呼ばれているらしいな。ジョーから聞いたよ」

「ジョー!? お前、ジョーに何をした!? ジョーを返せ!!」

 男は興奮した様子で鳥の首もとを叩いていた。

 だが叩くといっても全長は宇宙防衛隊の母船よりも大きな鳥だ。

 何をしても無力なのは男もわかってはいた。

「おい、やめろ。俺は無事だ」

「えっ?」

 そんな男の背後から現れたのはまぎれもなくジョーだった。

「ジョー!? どういうことだよ」

 ジョーは目を見開いている男に近寄った。

「心配かけて悪かったな。実は、戦闘機のトラブルで隕石と衝突しちまったんだ」

「は?」

「大怪我をしちまってもうダメかと思っていたらコイツが助けてくれたんだ。あ、コイツの名前はダイダイ。俺がつけた。大きいしミカンみたいだからな。ハハッ」

「ジョー……」

 男はあきれたような、力が抜けたような顔でジョーを見ていた。

「ダイダイはすごいんだぜ。ダイダイの体内はどうやら人間の細胞を再生してくれるみたいなんだ。時間はかかったが瀕死だったこの俺が見てのとおりだ。ダイダイを本部に連れていって研究するぞ」

「研究!? でも、いいのか、ダイダイ」

 男が聞くと、ダイダイはまた巨大な翼を広げ始めた。

「丸まって寝て、たまに起きて羽根を伸ばすだけの生活だ。俺が何かの役に立つなら喜んで行くよ。ただひとつ、俺が何でものみ込んでいる危ない生物っていう噂を消してくれるならな。俺はただあくびをしただけだ」

 男とジョーは顔を見合せた。

「ハハッ、もちろんさ」

「お安いご用だよ」

 そう言うとダイダイは大きな翼をゆっくりと上下に動かし始めた。

「つかまってろよ」

 広大な宇宙の中を、巨大な鳥が羽ばたいている姿はそれはそれは美しいものだった。


 宇宙防衛隊の本部となっている大きな母船。

 その上には巨大な宇宙生物ダイダイの姿があった。

 まるで母船を見守っているかのようにたたずむダイダイは、宇宙防衛隊の一員として、今日も宇宙で暮らすたくさんの生物たちを再生し、癒しているのだった。



             完





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