俺のクラスには変なやつがいる

@hutaba_123

第1話

俺のクラスには変なやつがいる。


俺の名前は山田海星。月下高校の2年1組の、部活はバスケ部。髪の毛はなぜかいつもツンツンしている。目はちょっとキリッとしていて、まあ、クラスの中ではどちらかっていったら目立ってる方かな。でも、フレンドリーだよ…?…って俺の話ばっかりしていたら気持ち悪いから、これくらいにしておこう。



ある日のことだ。俺は部活の練習から家に帰ってきて、自分のベッドにダイブした。今日の走り込みはしんどかった。休日の部活ってしんどいよなあ。突然なんだけど、実は俺は、世界遺産が好きなんだ。さっきも、某テレビ局の世界遺産を紹介している番組を見た。柚子さんがナレーターをしている。柚子さんの声、きれいだったなあ。あっそうだ、クラスのグループラインで他の人のラインのアイコンとかを見ようかな。どんなアイコンにしているかとか気になるし…。…実は、たまに見ているんだ。でも、数ヶ月に一回くらいしか見ていないよ…?



そして、クラスのグルーブのメンバーリストの画面をスクロールしていた。

そこに、


「愛情一本チオビタドリンク」


それだけだった。えっ、これは誰だ!?本木可南子。テニス部で、一つぐくりで、あの、普通の感じの子かな?ちょっとポチャッとしていて、にかっとした笑顔の…。でも、あの子って、普通の感じの子じゃなかったか?なんで、こんな変なラインのステメを…。


 


そして、次の日の朝、眠たい目を擦りながら教室のドアを開けようとした。すると、 


 「よっ。」


高い身長に、四角いメガネ。あっ。雄介だ。


「おはよう、雄介。」


雄介は同じ部活でクラスも同じ。俺のクラスで一番よく喋る友達。そこで、俺は昨日のことを思い出した。


「なあ、雄介、本木さんのラインのステメちょっと不思議なんだけど知ってる?」


「ああ、知ってるよ。なんだったっけ?」


「愛情一本チオビタドリンク!ねえ、なんでこれか知ってる?」


「ああ、なんか、前、女子が話してたよ。」


「え、そうなんだ!」


すると、朝礼が始まるチャイムが鳴った。



二日後の3時間目の授業の後だった。次の時間は体育で、俺は運動場へ向かっていた。ああ、次体育かー。だっる。行きたくないなー。俺、ハードル走、苦手なんだよなー。毎回、なぜか必要に絡んでくる縞模様のハードル。俺はそう言えば先週の授業でハードルを3本も倒した。その時、前に、本木さんと数人の女子が歩いていた。


「ねえ可南子ちゃん!なんで、ラインのステメが『愛情一本チオビタドリンク』なの?」


「ええと、それはね!」


・・・まさかこれは聞けるチャンスなんじゃないか!?聞き耳を立てていたが、


「あっ、もうすぐ体育の時間だ!」


本木さんがそう言った。


「ほんとだ!早くいかないと…!あの先生怖いしね!」


前を見ると3人は走りだした。えー。聞きたかったのに。


 


そのあと数日後、クラスで少し小さな、でもちょっと重要なイベントが起きた。今日は、「席替えの日」だ。先生が飴を入れるような入れ物を持ってきて、この中にはくじがある。よし!友達の近くになりたい!俺は意気込んで席を立った。すると、


「なあなあ、席替えって、結構重要だよなー。後ろの席に座りたい。」


斜め後ろの席からボソボソとつぶやく声が聞こえた。俺はその声が誰なのかすぐに分かった。雄介だ。いや、雄介はそっちか!寝たいのか!いや、でも俺もなにも言えないんだけどなあ。


そして、俺はくじを引きに行った。その紙には13番が書いてあった。


 


次の日、ドキドキしながら学校に行った。階段を歩きながらも、そのことを考える。そして、教室に入って黒板を見た。黒板に貼られた名前のマグネットを凝視する。そして、俺の名前は教室の真ん中の方にあった。友達は…。えっ!マジが。雄介も他の友達も、全然違うところにいた。少し、いやかなり落ち込みながらも、隣の席の名前を見た。そこに書いてあったのは「本木」の字。えっ!あの本木さんの隣かあ。ステメが変だし、でも、普通にいい子そうだし…。偶然から本木さんの隣になった。


 


その何日か後、英語の授業でペアワークがあった。まずは、となりの人と自己紹介をしてくださいと先生に言われた。よし!本木さんに話しかけてみよう!


「………」


なぜか、少し緊張が走った。話かけられなかった。そんなこんなしているうちに、本木さんから話しかけてくれた。


「山田くんだよね…?」


本木さんはその優しそうでにかっとした笑顔で話しかけてくれた。


「あ、そうそう。覚えてくれててありがとう。」


ちょっと、俺は緊張していたんだけど、本木さんはその優しい笑顔で笑ってくれた。


「じゃあ、この教科書の36ページを見てみよう!ここのbe動詞は前の単語の動詞で…。」


そうして、授業は終わった。


 


そしてその日の夕方。僕は今帰り道の道路をを歩いている。夕日が沈みそうだけど、その光がとなりに歩いている雄介のメガネに反射してオレンジ色に光った。今日、本木さん優しかったなあ。でも、あのステメは何なんだろう。頭から離れない。そう思っていると、


「なあなあ海星、今日の部活のシュートの練習きつかったよなあ。もっと、時間短くなったらいいのに。というか、顧問の田中先生、今日めっちゃ俺らの練習があまい!とか言ってきたよなあ。なあ、海星は先生怖いと思わない?」


頭がぐるぐると回っている。本木さんのステメのことが頭から離れない。


「ああ…。怖いとは思うよ。」


ぶっきらぼうな返事で返してしまった。ああ、これだったら雄介に怒られちゃうよ。


 


それから一週間の間に、ペアワークは何回か行われた。本木さんは、とても喋りやすい子だった。そして、僕らは少し仲良くなった。本木さんの韓国アイドルのグループの好きなメンバーを知っているくらいに。


 


そして、その一週間くらい後だけど、俺は、部活の前に着替えをしていた。そしたら体育館シューズを教室に忘れていることに気づいた。


「田中先生!体育館シューズを忘れました!」


「おい!もう部活始まる3分前だぞ!早く取りに行ってこい!」


先生は困った目で僕の方を見てくる。焦りと緊張が湧いてきた。早く教室へダッシュだ。俺は廊下を全力ダッシュした。


 


とにかく俺は全力ダッシュで教室に入り、息を荒らしていた。そして、目の前を見ると教室にはもう1人、人がいた。すると目がパッとあった。それは、本木さんだった。本木さんは自分の席に座っていた。ちょっと気まずい感じで、俺も自分の席に座った。ごそごそと、机の横の物から体育館シューズを探していた。うーん。ちょっと話してみようかな。本木さん何で教室にいるんだろう。ステメのことも気になるけど、そのことの方が気になる。


「本木さん。」


「えっ、はい。」


本木さんは緊張した顔でこっちを向いてきた。言われてみれば、教室で二人っきりって緊張するよなあ。


「急に話しかけられたからびっくりしちゃった。」


本木さんは少し、笑顔になった。


「ごめん。急に話しかけちゃった。本木さん、なんで今教室にいるの?」


「あ、それはね。今日は部活が休みの日だったんだ。だから、ちょっと勉強してた。」


本木さんは真面目なんだな。本木さんもなんで教室にいるか分かったし、俺の体育館シューズを忘れて全力ダッシュしてきた話もしようかと思ったけれど、俺の頭には他のことが浮かんだ。「愛情一本チオビタドリンク」のことだ。


「本木さん、ラインのステメ、『愛情一本チオビタドリンク』って書いてあるけど、なんで?」


「ああ、それは…。」


 


そのあと本木さんが話してくれたことはこんなことだった。本木さんはその頃、中学1年生だった。その時の本木さんの一番の悩みは部活。よくミスをしていた。特にバックハンドがすごく苦手だった。それで、練習試合になると、本木さんが原因でよく負けてしまっていた。そのことに罪悪感があった。それに、顧問の先生にもミスをすると毎回怒られる。そして毎日、テニスラケットのカバーを自分の部屋でぼーっと眺めては部活を思い出していた。それにもう一つ彼女が悩まされていたのは、クラスの友人関係だった。5人くらいのグループだったけど、本木さんにはノリが合わなかった。グループのみんなはちょっと気が強くって、よく他のクラスメートの悪口とかも言っていた。自分には、このグループに居場所はないなと思っていた。でも、クラスではグループが固まってしまっているし、他のグループに入るのも、勇気が出なかった。そして、ある日曜日、部活があった帰り道に、一人でとぼとぼと歩いていた。部活でもうまくいってないし、クラスでもうまくいってない。どよーんとした気持ちで、夏の強い日差しの中で歩いていた。こんなにしんどいなんて。明日も学校でクラスに行かないといけないし。多分、ちょっと沈んだ顔で、濃い緑の葉が生えた、木がたくさんある道で歩いていた。そしたら、急に誰かが話しかけてきた。顔を上げるとそこには、ベンチに座るおばあちゃんがいた。


「どうしたんだい?悲しそうだから、話しかけたくなっちゃったよ。」


「あ…はい。」


「おばあちゃんなら、何か辛いことがあったら話を聞いてあげるよ。」


「えっ、そんな…。」


「話したくなかったら全然いいんだよ…?」


どうしよう、この悩み、誰に打ち明ければいいのか分からない。全然知らないおばあちゃんだけど、でも、誰かこの悩みを聞いてほしい。この気持ちを解放したい。


そして、本木さんはおばあちゃんに悩んでいることすべてを話した。目も、少し潤んだ。おばあちゃんは優しい表情で話を聞いてくれた。


「そうだったのかい。おばあちゃんも長い人生を送ってきたからいろんなこともあったよ。」


そして、おばあちゃんは、かばんの中をごそごそし始めた。そして何かを取り出し、腕を大きく上げた。まるで自由の女神だった。


「『愛情一本チオビタドリンク』!これさえあれば、元気になれるよ!」


本木さんの表情には、少し笑顔が戻った。


 


「こういうことが、あったんだ。だから私のラインのステメは『愛情一本チオビタドリンク』!」


 


俺のクラスには変なやつがいる。

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