泉鏡花と弟子の寺木定芳くん。『悪獣篇』が生まれたきっかけの事件のお話。

「これは僕が、名作『悪獣篇』が誕生するきっかけとなった事件に遭遇した時の話」の書き出しの一文と『泉鏡花が事件の謎を解く。あの作品の元ネタはこの事件だった!!』のキャッチフレーズが、とてもわかりやすいです。
もうズバリそんなお話です。

主人公は泉鏡花先生の弟子の「僕=寺木くん」(寺木定芳さんですよね)。


三人の妖しいお婆さんに導かれるようにして事件が起きて、さくっと解決してくれる泉鏡花先生。

途中で被害者キャラの視点を見せてくれて、「はいここまで」と情報を遮断され、その後は寺木くん視点に戻って「事件が起きました」となるのですが。
この時に読者側は「被害者と周囲の人達の関係性や何があったのか」の情報を持っているので「警部の推理は違うと思う」「真実にたどり着いてほしい!」って思うわけです。

そこで「それは違います、真相はこうです」と言ってくれるので、泉鏡花先生がヒーローみたいに格好良く、気持ちいい! という、鮮やかな構成でした。

読みやすく、かつ文豪好きや師弟好きをにこにこさせてくれて、ちょっと不思議な空気も感じさせてくれて。なおかつ、事件をわかりやすく書いて、少ない文字数で鮮やかに解決してくれる。好きだなと思いました。

完結済となっていますが、続きがあったらぜひ読みたいです。