第60話 鳥になりたい

 私は早速風を纏い、ドラゴンに乗り、向かって行く。


 あまり広くないから、少しやりにくいけど、それは神も同じ。むしろ飛行能力が元々なかった分、私が有利だ。

 飛べないというハンデを覆せるのだ。


 正直神に毒が効かない以上詩織は戦力とは数えられないだろう。

 その穴を私が埋めないと。


「確か貴方は強いとか言ってたよね。でも、私はそれ以上に速く動くから」


 風で体を指せる。そして、神と肉弾戦を繰り広げていく。

 大体わかって来た。

 先程よりもあらがえる。

 だが、一瞬でも隙を作れば、一瞬でやられてしまうかもしれないというオーラは感じる。


 全く、ラスボス戦っていう感じがするねえ。


 さて、だったら苦戦するけど覚醒して勝てるはず。

 まあ、覚醒前に倒すのが一番なんだけど。


「行くよおお!!」


 私は風の刃を製造し、空に浮かべる。

 戦いながら風の剣を使うというのは非現実的だけど、私にはできる。

 何しろ、闇の王戦では奴隷の目を使って戦ってたんだし。


 戦いながら風の刃で神を削っていく。

 しかも忘れてはならないのは、裏にリリシアや、詩織、そして闇の王もいるってことだからねえ。


 この戦力で勝てない方がまずおかしいレベルだ。


 さて、この攻防の間も詩織とリリシアは次々と攻撃を放っている。

 だが、中々ダメージを喰らってくれない。

 むむむ、ただ、私以外がふがいないだけ?

 そうか、失望したよ。

 私一人で頑張らないとね、


「リリシアちゃーん、もっとガンバってー」

「うるさいです」


 そう言ってリリシアは魔法を連打する。

 少し威力は上がったかな?

 流石怒りのパワーだー(棒読み)


 詩織も負けずに、毒の兵士で神を攻撃する。

 いい流れだ。

 これで勝てる。


 このまま畳みかける。

 さっさとこいつを倒して私は、ついに鳥になる。


「おりゃりゃりゃりゃりゃらやあああああ」


「くどい」



 超高熱のレーザーが私のお腹を貫く。


「こんなの前座にすぎん」


 痛い痛い痛い痛い。

 くう、不死身でも痛いわね。

 まさかお腹を貫いてくるとは。

 でもね、


「私も負ける気はない」


 お腹の傷はすぐには塞がらない。けど、塞がるのを待つのでは癪だ。

 今勢い倒さなければ。


 神も余裕たっぷりに話しているが、余裕はないはずだ。


「行くよお!!」


 一気に地面をけり、ドラゴンの乗って神に向かって行く。地面を見ると、リリシアも詩織も無事なようだ。

 ただ、闇の王は倒れて私の中に戻ってしまった。


「ほう、まだ向かってくるか」

「ええ、勿論」


 私は拳で殴ろうと、向かってくるレーザーを避けながら、神の方へと向かって行く。

 当たれば脅威、逆に言えば当たらなければ脅威ではない。


「行くよお」


 そしてゼロ距離で拳をハンチ、神の顔面をえぐる。


「むう、消え去れ」

「射程内だけど、避けられる」


 レーザーをぎりぎりで避ける。

 はは、スリルあるねえ。


「ならば」


 神の体が輝きだす。


「そうはさせないわ」


 詩織が飛び、毒を飛ばす。神の体の周りに放つ。そしてその毒が硬質化した。


「まさか」

「勿論対策よ」


 そしてエネルギーは暴発し、神は空から落ちていく。


「次は私が」


 そう、リリシアがいい、全魔力をお目た一撃を神に喰らわす。


「おのれ、ふざけるな。私は神だぞ」

「それがどうしました? あなたはただの傍観者。誰もあなたになんて感謝していません」

「……」

「消えてください」

「ぬおおおお」


 神はリリシアの魔弾に飲み込まれていく。


「やったのですか?」


 リリシア、それフラグ。


「ふふふ、耐えたぞ。反撃だ」


 熱い熱波が飛んでくる。

 だが、ここは私が突っ込む。

 ここで止めなければ泥仕合になる。

 そうなれば私たちは確実に負ける。


 痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 でも、意識を手放すわけには行かない。

 ここで決めなければ。


「神いいいいいい」


 爆風を抜けきった。これならば行ける。

 そのままこぶしで、神を殴る。殴る殴る殴る。


 その勢いで神を地面に叩き落してさらに殴る殴る。


「詩音さん。もう神は意識がありません」


 と、リリシアに言われた。


★★★★★


「それで神さん。私を鳥にして」

「それは不可能だ。私は神の破壊をつかさどる方だ」

「は?」

「私は声明をつかさどる方の神と同じ記憶を生じている」


 なんだよ。だったらあの神とお前は別人じゃん。

 まるで自分が声明をつかさどる方の神みたいな感じを醸し出していたし。


「それで、どうやれば鳥に慣れるの?」

「それは私も同意見」そう、詩織が言う。


「私も今も体が痛いの。今日も毒の力を使ったしね」

「分かった。それには展開に行く必要がある。それには天界門が必要だ」

「天界門……」

「そうだ、そこに行けば貴様が取りになる手助けをしてやろう」

「……裏切らないよね?」

「ああ、それは勿論」


 そして、神の言う通り、私たちは展開に向かう。裏切られたらたまったものではないので、後ろ手で拘束しながら。

 例の四天王はもう倒れているはずなので、敵はいないはず。

 神さえ動きを封じておけば、もう怖い物なんてないはずだ。


 そして天界門の前に立つ。


「頼むよ神」


 私はそう言って扉を開けさせる。


 そうして向かった先は雲の上の世界だった。


 如何にも天界という感じがする。

 気持ちが心なしがポカポカしてくる。

 なるほど、ここが天国か。

 私にはもう一生縁のなさそうな世界だな。

 だって、私はたぶん死んだら地獄に行くし。


「すごい場所ですね」


 お、リリシアも私と同じことを思ったか。同士だね。


「醜悪だね」


 ただ唯一詩織が嫌悪感を見せた。



「あ、珍しく私と意見一致してないじゃん」

「当たり前よ。だって、ここが神の、宿敵の住処でしょ? そりゃ、嫌だよ」


 確かにそう言った考え方もあるか。



「確かにね。そう考えたら一気に気持ち悪くなってきた。さすが私」

「早く用事を済ましてこんなところ早く出たいわね。体も毒で侵され始めてるし」


 そう詩織は胸を押さえる。


「そうだね。私も早く鳥になりたいしね」


 そして、歩くこと二〇分。ついにその場所に着いた。


「詩音か。久しいな。あの時話を聞かなかった馬鹿」

「ええ、私よ。こんどこそ本物だよね」

「本物だ。さて、武神を倒すとは見事だ。力を与えよう」


 そう言った神は、私と詩織の目も前に立つ。


「そして、そちらの娘」


 そう言って神はリリシアを見る。


「武神を倒したという事を認め、もう人間には干渉しないことにする。それでいいな」

「はい」

「さて、望み通り、詩音詩織両名を望む世界に持っていこう」


 その瞬間私の意識は消えた。


 そして次に目覚めたとき、私は空を飛んでいた。ただ、真っすぐに飛んでいた、

 自由に空をただ、自由に飛んでいた。

 その時点で私は理解した。

 鳥になれたのだと。


 ああ、良かった。これで私は自由だ。


 そう思い、私は大声で笑った。


 何年待っただろうか。

 生きててよかった。







 その後、詩織は新たな生を受け、その人生では毒の苦しみなどない生活を送った。

 リリシアはそのまま王として荒廃しきった世界を統治し、良王として君臨した。

 闇の王はそののち、暗黒大陸を基盤として国を作った。

 そこから、リリシアの国に戦争を仕掛けたが、ぎりぎりで敗れた。


 だが、そんなものは当の詩音には関係がない。

 詩音は鳥に慣れた。それだけで幸せなのだから。





後書き



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ここまで読んでくださってありがとうございました

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鳥になりたかった少女、異世界で残虐な魔王となる 有原優 @yurihara12

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