第59話 復活詩音

「はっ!」


 私は目が覚めた。えっと、ここはどこ、私は誰?




 まあ、冗談は置いといて、確か闇の王に力を貸してたはずだ。

 そして、その代償で意識を失っていた。

 ラモスを倒したのは知っているが、その後どうなったのだろうか。


「あ、目が覚めた?」


 目の前の少女が私に言う。



 えっと、え?

 私と見た目が全く同じだ。

 どういうこと?

 ドッペルゲンガー?

 てことは私は死ぬの?


「あはは、驚いてるねえ」

「いや、驚くでしょ、貴方は誰なの?」

「私は荒巻詩織、パラレルワールドのあなたよ」


 ほえ、漫画っぽい。

 摩訶不思議だけど、私には違う。

 そもそも私自身漫画みたいな存在なのだ。


「……それで、今まであったことを話してくれない?」


 私だけ置いてきぼりだ。


「わかったよ」


 そして彼女から聞いた話は私にとって衝撃的な内容ばかりだ。

 神との戦いの際に、リリシアはボコられた。その際に詩織が助けに入って神をあと一歩のところまで追い詰めかけたが、神の力が強く結局は負けに等しい引き分けだった。

 それで力が足りないことを知ったリリシアは力を引き出すために神殿に行ったという話だ。


「そう言えば私の体」


 いつの間にか体が元に戻っている。


 元の私の成長に。


「多分それは私がこの世界に来たからだと思う」


 なるほど。原理はよくわからないけど、元に戻ってるのならば、原理がどうであれ関係がない。


「それで、神が来るのはいつ?」

「もう来てもおかしくない」

「そっか。もう私は全力出せると覆うけど、勝ってるかな?」

「分からないよ。でも、やってみなきゃね」

「流石私、良いこと言うねえ」


 喋っててすごく楽だ。

 私は元々人と話すことは得意じゃない。

 日本でも、自分の話をしすぎて友達なんてできなかったし。


 事故中だなんて何度言われたか。

 その結果、人との対話を諦めていたものだ。


 だからこそ、鳥に憧れたいだ。


「じゃあ、早速戦闘の勘を取り戻すためにあなたと戦ってもいい?」


 毒使いの私、絶対に戦いたい。


「だめだよ。私も戦いたいけど、風みたいな便利な力じゃないからね、戦いの中で体力が削れていくの」

「じゃあ、だめかあ。リリシアに喧嘩打ってみようかな」

「それも辞めた方がいいと思うよー、神が来るの今日の可能性が高いし」

「などほどぅ」


 そんな時に雷鳴が来た。


「闇の王」


(ああ、神だ)


 ついに神が来たのか。

 楽しみだ。


 まずは先制攻撃だ。


「ダークブレッドおおお!!!」


 闇をまとった拳を纏い、神の方へ飛んでいく。


「小癪な」


 神はすぐさま私の攻撃をよける。


「すぐに終わらせてやろう」

「よけるなんてずるいよー」

「ふざけるな」


 神は背後から私を打った。

 ドラゴンを使わないと飛べないからさ自分の力で飛べるのズルだよ。


「うーん、じゃあ」


 巨大な炎を生み出す。


 その炎を神に向けて放つ。


「くどい」


 炎は神の放つ炎に相殺された。


「うーん。これだと勝てないなあ」

「なら共同でしょ」

「そうだね」


 私と詩織は飛び上がる。そして毒のドームを作り出し、行き場を少なくする。

 私と詩織は能力の情報共有が出来ていない。

 私が聞いたのは、毒で戦うという事だけだ。

 だけど、それはそれで合わせられる。

 私が近接を担当して、詩織に援護を任せればいい。


 闇の王も出して総力戦だ。


 毒のフィールド、毒の商機が激しいが、詩織の力で何とかなっている。


「さて、」


 そこに現れたのはメリダだ。

 炎を纏っている。

 私を引きはがそうという狙いか。


「フレイムよ、燃やし尽くせえ」


 炎が私のもとに来る。


「でも、呪いが解けた今、貴方に負ける道理はない」


 私は風の刃を作り、メリダの方へと飛ばす。


「はは、いいねえ。でも、風と炎は相性が悪くないか?」



 実際そうだ。風は炎の威力を挙げてしまう。


「だったら、」


 私は、水を作り出す。


「これでどう?」


 水が一気にメリダの炎に襲い掛かり、相殺する。


「さらに、私は強いよ」


 そのまま地面を蹴って、メリダの体に近づき、


「吹っ飛んで」



 風で一気に体を押しのけ、そのまま水弾を放つ。


「ふふふ、逃げ道のない私に向けてか。いいねえ」


 風で吹き飛ばされるスピードよりも速く水を放っている。

 これで直撃すれば大ダメージを与えられるはず。


「だがなあ、そううまくいくかなあ」


 メリダは毒の壁に足をつけ、そのまま跳ね返す。

 その影響で毒が回ってるように見えるけど、たぶんこっちの方がダメージ少なくて済むとでも思ったのかな。


「でも、ダメージ喰らったのは事実だよね」


 私は手に雷のエネルギーを溜めて、一気に放出した。


「これはよけれるかなあ」

「ちぃ、させるかよ」


 そしてそのまま風で雷を纏わせ雷風をお見舞いするが、相手も炎をぶつける。


「ふふふ、でも、私が勝つんだよね!!!」


 力の押し合いなら得意だ。

 その点で炎だけしか扱えないメリダは弱い。


「行けええええええええええ」


 私の雷風が炎を跳ね返し、そのまましびれさせる。


「くう」


 このまま押し込む。


「ダーク、ソルトウォーター!!!」


 黒い塩水が飛んでいくその塩水がメリダを苦しめる。

 塩は傷口をえぐる。

 これで、私の、


「勝ちだああ」


 とどめは拳で。

 メリダをぶっ飛ばした。




「よし」


 目の前にメリダが倒れている。


「私は私で、向かわないとね」



 そこにはすでに神とい詩織とリリシアが対峙していた。


 髪はまだこちらに気付いていない様子。

 行ける。


 ぼそっと、


「サンダーストリーム!!」


 雷風が神を襲う。


「ぬぅ」

「行くよー!!」


 私は神に殴り掛かる。その間に詩織が、「ポイズンショット!!」毒の弾丸を弾き飛ばす。


 そしてリリシアも妖精の炎を吐く。三点同時攻撃だ。


「喰らええ」

「ほざくな」


 私の拳は受けとめられ、他二つの攻撃もあっさりとよけられてしまった。


「流石は神」


 私を個の異世界に送った元凶。

 鳥に転生するためにはこいつを倒すしかない。


「いいねえ、敵は強ければ強いほど燃える」


 私は手をギュッと握る。


 そして、


「ウインドブレス」


 風の吐息を放ち、その中にざらざらとした意思を含める。


「同じ手を二度も喰らうかあ」


 神は風でその石をすべて弾い返す。


「詩織」

「ええ」


 詩織は毒の巨神を作り、神の背後に設置する。


「我の存在を忘れるな」



 闇の王が神の背後から闇の弾丸を放つ。

 神がそれを避けている間に、詩織の巨神兵が神を穿つ。


「二度も食わんよ。もう克服した」


 その神の姿に傷はつけども、毒が回っている様子はない。


「ああ、あの時仕留めていればよかったわ」

「え?」

「毒を克服されてる、しかもこの短時間で」


 うーん、ということは詩織はもう使えないただの雑魚?

 だったら実質私とリリシアだけじゃん。


「でも、いいや」


 勝つから。


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