うどんになれない私たち

珠邑ミト

うどんになれない私たち



本当に、うどんになりたかったのか、どうか。

それも、もうわからない。

私たちは、うどんにはなれなかったのだから……。


同じ麦として生まれたはずなのに、こなごなに砕かれたあと、熱いお湯と塩でつなぎあわされて、決まった形にこねあげられて。


そうして決まった形に切り分けられて、整形されたときに切り捨てられた端っこは、うどんとして認められずに廃棄される。


規格とは、そういうものなのだ。


そして、そこに入らずにほっとした私たちを待っているのは,さらに化学変化させるための、茹で。


その時に、溶け出てしまった粉が、つまりは私たちなのだ。


私たちは、うどんにはなれなかった。


茹で上がったあと、ぬめりとして洗い流されて、いのちとしてすらカウントされなかった。


きれいなうどんの下には、

無数の私たちが横たわっている。


うどんになれなかった私たちは、

そうして今日も、私たちで生きるしかないのだろう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

うどんになれない私たち 珠邑ミト @mitotamamura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ