テイエス帝国の危機!編
第20話 襲来、触手攻撃
コーコの村を旅立ってから数日。
──ヒカエメ海岸。
テイエス帝国領内まであと僅かという所で広い海岸に出た。内陸国であるキーダ王国出身のユリス姫の希望により、海岸でキャンプをすることとなった。
このヒカエメ海岸はかつて岩石亀ガドーカタイマイの住処として有名だった。しかし、ガドーカタイマイの雌は貞操観念が非常に強い。それによって子孫を残せず、この海岸からは跡形もなく消え去ってしまったという。
「かつてのこの地であったなら、キャンプどころではなかっただろうな」
満潮になっても問題の無さそうな崖の上にキャンプ地を定め、そこに馬車を横付けした。
起こし終わった火の周囲に椅子がわりの丸太を置く。すると、テントを準備していたゼフィーがそばにやって来た。
「アレックス、テントの設置終わったぜ」
「ありがとうゼフィー。ガーラの方は終わったか?」
「ん〜もうちょっと〜」
ガーラが瓶に入った魔物避けの聖水を撒きながら、キャンプ地をグルリと取り囲む。
周囲を見渡す。崖の上から見える海岸は水平線が見えるほどどこまでも広がっていた。
……これだけ見通しが良ければ魔物が避けの心配もないか。
「終わったよ〜」
空になった聖水の瓶を持ってガーラが駆け寄ってくる。火元で焼かれている肉を見て、スンスンと匂いを嗅いだ。
「うわぁ〜美味しそうな匂い! 何これ?」
「あぁ?
近くで弓の手入れをしていたニアがこちらを見た。
「……刺股ブラックバックは筋肉がしなやかでクセがない。それに、狩るには楽。頭に付いてる刺股状の角がちょっと厄介だけど」
「詳しいな、ニア」
「……ボクの父さんは狩人だったから」
そうか。どうりで手際がいいわけだ。狩りから捌く所までほとんどニア1人でやってしまったしな。
「早く食べようよゼフィ〜」
「おい! 姫様が食う前に食うんじゃねぇ!!」
「でもぉ〜ガーラお腹すいたしぃ」
グ〜と鳴るお腹を押さえながらガーラが俯く。
「それじゃあガーラ、馬車まで行って姫様を呼んで来てくれ」
「うん! 分かったよ〜」
ガーラがパタパタと走って行った。
「なぁアレックス? ニアには悪いがこんな肉を姫様に食わせていいのか?」
ガーラが心配そうな顔で見上げてくる。
「姫様が私達と同じ食事が良いと言っているんだ。彼女の想いを尊重しよう」
「まぁ……それならいいんだけどよ」
そんな話をしていた時。
周囲にガーラの声が響き渡った。
「ひゃあ〜〜〜〜!?」
「オクーーーーーーーーー!!」
「な、何この声……!?」
ニアが戸惑った顔で弓を構える。
「この声……オクーテンタクルだ!!」
◇◇◇
「やめてぇ〜装備取らないでぇ〜!?」
「オクーーーーー!!」
声の場所まで行くとガーラがイカ型の魔物……オクーテンタクルの触手に絡め取られていた。フルヘルムは投げ捨てられ、茶色いショートカットに大きな瞳の少女が目を潤ませてこちらを見ていた。
「クソ。求愛期だったか」
「……どういうこと?」
ニアが弓に矢をつがえる。しかし、オクーテンタクルは触手を巧みに使い、ガーラを盾にする。舌打ちをしたニアは悔しそうに弓を下した。
「オクーテンタクルは同種族のメスに対して非常に消極的なんだ。普段はそれでいいんだが……求愛の時期になるとフラストレーションが最大まで溜まり、それを人間にぶつける」
「なんて迷惑なヤツなの……」
ニアはゾッとした顔で手を握り締める。
「う〜助けてぇぇぇええ……」
「オクーーーーー!!」
オクーテンタクルが触手を器用に使い、ガーラの鎧を外していく。
「やめてぇ! 絡みつかないで〜」
シュルシュルとガーラに纏わりつき、鎧を外していく触手。その様子を見たゼフィーは呆れたようにため息を吐いた。
「何やってんだよガーラ。そんなヤツお前なら倒せるだろ?」
「だってぇ……剣置いて来ちゃったんだもん……テントに」
「はぁ!? お前……っ!?」
「だ、だってぇ〜動きやすいようにってぇ……」
周囲が一気に緊張感に包まれる。
「あ、ちょ、服の中に入ってこないでぇ〜!?」
「オクーーーーーー!」
暴れるガーラ。それの何が気に食わなかったのかオクーテンタクルがその触手でガーラの服を破り始める。
「嫌ぁ〜〜〜〜〜〜!?」
「ま、まずいぜ……!? このままじゃガーラの奴が……!?」
涙目で顔を赤くするガーラ。焦るニアとゼフィー。
その瞬間。
私の中で何かが弾けた。
「うおおおおお!!!」
「オク?」
剣を構え、オクーテンタクルへと突撃する。
「オクーーーーーーーー!!!
残った触手が私へと絡みつき、鎧を奪おうとする。
「オックックックック」
触手が鎧へと纏わり付く。ヤツが触手の吸盤を鎧へ張り付け奪おうとする。そのタイミングを見計らって己の剣で、服の腰紐を切断する。
服を固定する物が無くなり、鎧ごとスルスルと脱げ落ちて行く。
「オクッ!?」
鎧を奪い去ろうとしていた触手が、鎧と共に落ちていく、私の体から離れ、オクーテンタクルが無防備になる。
「
スパンスパンッ!!
「ふあっ!?」
絡みつかれていたガーラが自由の身になる。
それを抱き留め、オクーテンタクルの額へ剣を突き刺した。
「オグウウウウゥゥゥゥ……」
悔しそうに涙を流しながら、オクーテンタクルは息絶えた。
「すげぇえええ!!」
「どうやって……!?」
ゼフィーとニアが駆け寄って来る。
「触手対策にな。いつでも装備は外せるようにしているんだ」
触手を使うペドリアスドラゴンと戦った経験がこんなところで生きるとは……人生何が起こるか分からないな。
「お、お姉ちゃん……ありがとう」
「ああ。ガーラに何もなくて良かった」
ガーラは服が肌け、ほぼ裸のようになっていた。
本当に……何もなくて良かった。
「まぁ〜何事もなくて良かったぜ。それに……なぁニア?」
「……え?、あ、ふふ……」
なぜか2人が私のことをじっと見ている気がする。
なんだ? 何かあっただろうか……?
「みなさん
後ろから聞こえるユリス姫の声。その様子に違和感を覚える。
「ん?」
振り返ってみるとユリス・キーダ姫は顔を真っ赤にしながらプルプルと小刻みに震えていた。
「へ、ふふふへへふふふはは……よ。幼女と幼女が裸で抱き合って……!?」
ん? 裸?
下を見ると白い肌に2つの丘が露わになっていた。
「ああ。
「しょくしゅうううううううぅぅぅっ!?」
姫が鼻から地を吹き出し、空に百合の模様を描く。
「姫えええええええ!?」
「姫様ぁ!?」
「姫……!?」
空中に描かれた模様は夕焼けに照らされ、キラキラと輝きを放っていた。
―――――――――――
あとがき。
なんとかガーラの危機を救えたアレックス。次回はいよいよテイエス帝国へ……。
モンスター辞典
刺股状の角を持つ鹿のようなモンスター。人間を見ると突撃し、その刺股状の角で拘束して来る。大人しくしていれば命の危険は無いが、無理に逃げようとすると刺股が思わぬ所に辺り怪我をする恐れがある。
オクーテンタクル
イカ型モンスター。気が弱く、同種のメスに求婚できない為に絶滅の危機に瀕している。そのフラストレーションを人間にぶつける為、非常に凶悪。触手捌きが上手い。その理由は誰にも分からない。
TSロリババァ百合ハーレム騎士団〜【悲報】TS幼女化した最強騎士の私、うっかりTS幼女騎士達に愛されすぎてハーレムを作ってしまう【こんなはずじゃ】〜 三丈 夕六 @YUMITAKE
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