第7話 心霊スポット 水(一)

 参加したのは三年生の哲也とアキラと京介の男子三人。女子は四年生のマリと有紀と葉山はやま、三年生の智恵と泰子の五人だった。

 朝早い時間に大学のキャンパスの前に集まって車二台で国道〇〇号線をB市に向かって走る。

 二時間ほどで一本橋とよばれる橋に着いた。橋の手前に国道から東に入る道がある。道を進んで行くとすぐ左手に営業していないドライブインがあった。

 そのまま道を三十分ほど登って行くと滝が見えてきた。これが龍の滝かとみんなで確認する。確かに小さい滝だがすぐわかった。さらに、そこから少し行くと道が分岐する場所に着いた。一方は『三原ヶ洞山』と書かれている。もう一方は『水』と一文字書いてある。古い案内板だが文字が消えた形跡はなく、最初からその地の名前は一文字の地名で『水』だったようだ。


「へえ、水なんていう地名があるんだね」

 そんな話をしながら海の方に下っていく道を進んで行く。道は誰も通らなくなって随分経っているようで、木が道に倒れてきていたり、大小さまざまな石が道に散乱していたりして、時々、車を降りて木の枝や道路に落ちている石をどかしながら進まなければならなかった。


「この道は誰も通らなくなってどれくらい経つんだろうね」

「さあ、随分、長い年月が経っているようだね」

「でも、真理さんが行ってた学生の話。いつ頃のことなの」

「五、六年前かなあ。私が大学に入る前の話よ」

「へえ、でも、そんなに昔でもないんですね」


 三十分ぐらい行くとひと気のない集落があった。


 山道を縫うように下りてきた先に小さな港があり近くにちょっとした広場がありそこに車を停めた。

 小さな港に沈みかけた小さな船が数隻ある。

 先程、五人が車でやって来た道の反対側の山の斜面に家が建ち並んでいる。家と家の間は人が歩ける程度の小さな路地があるが自転車も通れそうにない路地だ。

 港のところにある広場を皆で共同の駐車場として使っていたのだろう。

 一通り探検してみたが、やはり、人はいないようだった。しかし、一体いつから無人になったのだろう。無人の様ではあるが綺麗な状態の家が多い。ガラスが閉まっていて割れている家もなく、どこの家も今は留守にしているが人が住んでいそうな雰囲気がある。イノシシやサルなどの野生動物に荒らされている気配もない。


「ここって廃村なんだよね」

「なんか、まだ人が住んでるような雰囲気があるんだけど」

 皆の中に違和感がある。なんだろう。そうだ、ここへ来るまでの道の荒廃振りと、この集落の保存状態に違和感を感じる。


「なんかさあ、ここへ来るまでの道は、随分、荒れてて、もう何年も人が通ってないような感じだったけど。ここの集落は、なんだかそれほど人がいなくなって経ってない。いや、今も住んでいそうな雰囲気だよ」

「なんか気持ち悪いね。この集落って、パッと見渡しても、さっき来た道しか道がないじゃない。ここで行き止まりみたいな感じで」

 智恵と泰子がかなり怯えている。


「ここに来た学生が行方不明になったっていう話は誰から伝わった情報なんだろう」

 京介がぽつんと呟いた。

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