古典部の田中君
彼方のカナタ
古典部の愉快な仲間たち
国立中央学園 古典部
ここは国立中央学園校舎別館にある、古典部の部室。
それは本館とは少し離れた場所にある、図書館と併設された資料室の一角。
そこでは…。
「後輩!我らが古典部の名を世に知らしめるために、銀行強盗をして全額募金するぞ!」
今日も狂った田中先輩は狂っている。
「それは世界にこの古典部の悪名を広めるだけじゃない?」
今日も冷静な文月先輩はツッコミ役に回っている。
「めっちゃ炎上すると思います。」
今日も普通な僕は普通な回答をする。
これが古典部の日常。三人で図書館や資料を漁り、討論や雑談をし続けている。もちろん今のはただの冗談だろう。
「ところで田中君、どうして銀行強盗なのよ。いきなりそんなことやって、許されるとでも思っているの?」
「文月先輩、いきなりじゃなくても許されませんよ。銀行強盗は犯罪です。」
文月先輩は冷静だけど…こう言っては失礼だがポンコツだ。
田中先輩は笑う。
「これまでに銀行強盗をして、全額募金したやつがいるか!?いや居ない!ならば我らが先駆者となり、時代を作っていくのだ!」
何を訳のわからないことを…。
「なゆたん、『何を訳のわからないことを』って顔をしているな?」
「もちろんです。それとなゆたん呼びやめてください。僕は加賀です。」
先輩は両腕を広げ、天を仰ぐ。そして悲しそうに言う。
「忘れたのか、霊暦5024年4月25日の悲劇をっ!!!」
そして、その流れに乗って文月先輩が泣き始める。この話のときだけは冷静さの欠片も見られなくなる文月先輩…。さては、名女優だな?
「忘れるわけないじゃないですか田中君。私達は立派な部活です。なのに、年に一度の部活長会議の招集者に古典部の名前はなかったんです。私達はっ…忘れられてたんです」
今年の部活長会議に僕達古典部は呼ばれなかった。部活として成立しているにも関わらず、同好会すら呼ばれる会議に…呼ばれなかったのだ。
「そ、それはもう解決したじゃないですか。」
田中先輩が会議に突入して…。あれは…酷かった。本当に。
しかし仕方ない。生徒会部部員が一斉に代わったことで名の知られていない部活は招集リストから漏れていたのだ。
「そう!だからこそ我らが名を知らしめるために!銀行強盗だ!」
そうはなりません。
「まぁまぁ田中君、この話はこのへんで終わらして、今日の物語を読んでいきましょうよ。」
いつの間にか泣き止み、普段どおりの状態に戻っていた文月先輩が言う。
さて、今日は霊国建国から100年ほど経った時の、ある物語である。さて、どのような物語が待っているのかな…。
「というか、ふみたんとなゆたん、俺のことを名前で呼んでくれ!俺がこの話を読み聞かせるから!」
あぁ、たなかさんだー。
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