ギンヤンマの約束

星咲 紗和(ほしざき さわ)

夏の終わりに交わした愛と自然への誓い

夏の終わり、田舎の静けさが心地よい頃、二人の高校生が小さな冒険を始めた。男の子は祖父母の家へと女の子を連れてきていた。彼女がトンボを愛していることを知っていた彼は、彼女に特別なものを見せたいと願っていた。ギンヤンマ、その煌びやかな翅を持つトンボを捕まえること、それが彼の彼女への約束だった。


手に手を取り合い、網を片手に、彼らは田んぼを歩いていった。足元を照らす太陽の光は温かく、微風が二人の髪を優しく撫でた。田んぼの周りでは、タガメやヤモリ、そして数え切れないほどの昆虫たちが彼らの小さな探検を静かに見守っていた。


二人はギンヤンマを追いかけた。その探求は、ただのゲームではなく、二人の間の深い絆を象徴する旅となった。彼らは笑い、時には転んでしまうこともあったが、それでも一緒に立ち上がり、再びその美しいトンボを探し続けた。


夕暮れが近づき、ついに男の子はギンヤンマを捕まえることに成功した。彼は優しく、それを女の子に見せた。彼女の目は驚きと喜びで輝いていた。しかし、二人がそのトンボの美しさと生命力を目の前にしていると、心の中で何かが変わった。彼らは、この生き物が自由であるべきだと感じたのだ。


彼らはギンヤンマを空へと解き放った。トンボが自由に飛び立つのを見ていると、二人の心は一つになった。そして、その瞬間、彼らは初めてのキスを交わした。それは、静かな田んぼ、夕日の光の中、完全なる自然の美しさに囲まれた、忘れられないキスだった。


そのキスは、ただの恋人同士のキスではなかった。それは、自然への深い敬意、互いへの純粋な愛情、そして共に成長し、学び、理解し合うことへの誓いだった。彼らは、この小さな冒険から多くを学んだ。生命の尊さ、自然の中での自分たちの役割、そして何より、二人の間の愛がどれほど深いものかを。


『ギンヤンマの約束』は、二人の若者が共に過ごした夏の一日の物語である。しかし、それは同時に、愛と自然に対する深い敬意の物語でもある。彼らの経験は、読者にも忘れがたい感動を与える。彼らが共に学んだ教訓は、単なる思い出以上のものとなり、永遠に彼らの心に残るだろう。

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ギンヤンマの約束 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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