第10話 二人が導き出した答え

 ピピピピッ、ピピピピッ。

 目覚まし時計のアラーム音で、風太ふうたは目を覚ました。

 手を伸ばして目覚まし時計のアラームを止める。


「んっ……」


 大きく息を吐いてから、起き上がろうとすると、ふと右側に温もりを感じて視線を向ける。

 そこには、スヤスヤと心地よさそうな寝息を立てるめぐみの姿があった。


「恵、朝だぞ」


 風太が声をかけると、恵がモソモソと動き出す。


「おはよー風太」


 しょぼしょぼとした目を手で擦りながら、ゆっくり顔を風太の元へと近づけてくる恵。


「おはよう恵」


 そのまま、どちらからともなくおはようの口づけを交わす。

 チュっと数秒の間唇を合わせてから、お互い優しく微笑み合う。


「あ“ーっ! あ”ーっ!!!」


 とそこで、娘であるうみの喚き声が、ベビーベットの中から聞こえてくる。


「はいはい、おはよう海ちゃーん! 今日も可愛いでちゅねー」


 恵はすぐさま起き上がり、ベビーベッドに寝転がる海の元へと向かって行った。

 風太はカーテンを開き、朝の光を浴びる。

 窓の外に広がるのは、綺麗に水面が輝くコバルトブルーの海。


 あれから風太と恵は、大学を卒業後に即結婚。

 その後、無事お互い成功させた就職先で三年間都内で働いた。

 妊娠をきっかけに、二人は田舎へ引っ越すことを決意。

 恵が生まれ育った地元へと越してきたのだ。

 風太は会社を転職して、今は完全リモートワークで仕事を行っている。

 月一回、都内の本社へ出社しなければならないものの、田舎生活を満喫していた。


 恵は、こちらへ引っ越す際に会社を退職。

 今は地元のサーフショップの店員としてアルバイトをして生計を立てている。


「ごめん風太。海にお乳上げるから、朝ごはんの支度してくれる?」

「分かった」


 風太は今も恵と良好な関係を築き上げており、幸せな生活を送っている。

 ベッドから降りて、風太は海を抱きかかえる恵の元へと向かう。


「おはよう海―! 今日も元気でちゅねー」


 海の小さいおててを触ると、海は「えーん」と喚きながら嫌そうに視線を逸らされてしまう。


「俺……海に嫌われてるのかな」


 どんよりと落ち込む風太。


「恥ずかしがってるだけよ。そんなに落ち込まないの」

「だってぇ……」

「もう、私との子供なんだから、パパの事大好きに決まってるわよねー!」


 そう海に問いかけながら、恵は海を優しく抱きかかえる。

 毎日のように行われているやりとりなのに、飽きないのだから面白い。


「恵」

「ん? どうしたnっ……!?」


 振り向きざまに、風太は恵と再度キスを交わす。

 恵も最初は驚いた様子だったものの、息を吐いて風太のキスを受け入れてくれる。

 お互いに唇を離すと、いつもと変わらない笑顔がそこにはあった。


「もう……バカ」


 そう言って、恵は頬を赤らめて照れるものの、その仕草一つ一つが愛おしく思えてしまうのだから仕方がない。


「恵、愛してるよ」

「私もよ風太。大好き」


 風太と恵は、セクハラ面接を受けていた恵を助けてから、わずか数時間足らずで大人の関係にまで上り詰めるというジェットコースター並の超特急だったけれど、今もこうしてお互い愛し合えていれば、付き合い始める過程なんて関係ないんだなと言うことを思い知らされる。


「さっ、今日も一日頑張りますか」


 恵の為、そして新たに二人の間に出来た我が子の為、風太は今日も、彼女たちを幸せにするために一日を励むのであった。


~完~




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最後までお読みいただきありがとうございます!


今回は就職活動で女の子に出会ったらどうなるのか?

みたいな感じで書かせていただきました。


セクハラ面接という部分はフィクションですが、面接を終えて電車乗り込み、『ねぇ、あの会社ヤバかったよね?』という話をしたのは今でも覚えています。

お茶には誘われなかったけど、ブラック企業の面接一緒に受けたあの子、今頃どうしてるんだろうな?


そんなありそうでありえない日常シリーズ第二弾でした。

今後も新作を随時更新して参りますので、よろしければ【作者フォロー】をよろしくお願いします。


それではまた、次の作品でお会いしましょう。


さばりん




新作情報

『終電を逃して彼氏持ちJKの家に泊まることになってしまった俺。誰か正しい対処法を教えてください!!』


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日常シリーズ第一弾

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セクハラ面接を受けていた陽キャ美少女JDを、陰キャモブが助けたら一体どうなる? さばりん @c_sabarin

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