闘え!心の闇を抱えた仲間たちと共に

ストレスにまみれた現代社会は、常に精神的な病と隣り合わせ。今日は大丈夫だったとしても、明日はどうなっているか、わからないものです。この作品は、そんな精神的な病という現代的なテーマを取り入れた、野心的な異世界ファンタジー作品です。

作品の2番目に『登場人物紹介』というエピソードがあるのですが、もうこの時点で不穏な予兆を感じました。ほぼ全員、なんらかの病を抱えているのですが、内容がどれもすごく重たいです。そして記載されている以上に、裏で何を抱えているか、わからない人物が多すぎます。

主人公の鬱病剣士ルークは、心身ともにポンコツを自認していて、それでも明日を生きるため働かなければなりません。そんなルークのような社会的弱者の受け皿となっているのが、転職先の株式会社イルネスカドル。前述の登場人物たちが所属しています。

社会的弱者だから、お互い力を合わせて困難に立ち向かうのだろうと思ったら、それも一筋縄ではいきません。個人の事情は千差万別で、だからこそ相容れない。

メンバーたちは、たびたびぶつかり合います。なまじ戦闘力も持っているものだから、本気のぶつかり合いです。その果てに発現する心の叫びが、生々しく、そして痛々しいです。しかし、それでも彼らは明日を生きるために闘い続けます。

彼らの闘いに勇気づけられる人はきっと多くいるはずです。彼らとともに闘う物語を、ぜひ読んでみてください。

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