最終回その2 妹の就職先は?
“シャクッ”
もしゅもしゅもしゅ……。
「う~ん。甘~い♪」
沙樹の休日の定番は、喫茶『プロバンス』のモーニング。ここの姫路アーモンドトーストがお気に入り。
サクサクトーストに、香ばしくも甘いアーモンドバターのハーモニーがたまんない。これは全世界に伝えるべき味だと思う。
トーストを一口食べるとコーヒーでお口直し。アーモンドバタートーストの甘さにコーヒーのほろ苦さがブレンドされて至福の味わいである。
「それにしても……」
お兄ちゃんはクリスちゃんと上手くやっているのだろうか。
ここ最近、急に男らしくなってきたけれど、自分の中では圧倒的に頼りないイメージが離れない。特に女の子のことになると、ホント情けないんだから。
クリスちゃんのことを大切にしている気持ちはわかるけど、あれだけ好意を寄せられていて、何もしないなんて、我が兄ながらどうしたものか。
そういう自分も、いまだ男の人とちゃんとお付き合いしたことが無いのは、絶対に秘密だ。
「さてと」
モーニングを綺麗に平らげて小さく伸びをした。
今日はいよいよ最終面接。
とある大手企業の面接が午後に控えている。
◆
「よし‼ 今日もカワイイ❤」
鏡の中の笑顔もばっちり。メイクもノリがいいし、何だかいけそうな気分……でもないか……。いざとなると自分は本当にこれでよかったのかと、自信が持てない自分がいる。
「もう、うじうじしないで、スパッと決めちゃおう。お兄ちゃんじゃあるまいし」
ジーンズとパーカーを脱いでリクルートスーツ手に取る。
すると……。
押し入れの引き戸がすっと開いた。
「
「それはこっちのセリフよ! これから就職試験の面接だってのに、何してくれんのよ!バカ
「痛っ、お前、何スーツ投げてんだよ!」
「……ああ~っ‼ やっぱり外に出られないじゃん! 私、これから第一志望の最終面接なんだよ。どうしてくれるのよ!」
「いや、どうと言われても……」
「サトウ様、どうされましたか? ああっ、沙樹様……」
「キュキューイ」
俺たちの騒ぎにクリスたちがやってきた。
「キュー♪」
沙樹は飛び込んできたキューを受け止めると、スライム越しに白の上下が水色のそれに変わった。ただ兄としては、妹の下着などまったく嬉しくないのだが。
「どこ見てんのよ、ヘンタイ‼」
「誰がお前の水色のやつなんか見るか‼」
「あっ、やっぱ見てるじゃん、サイテー‼ どうせ私のいない間、クリスちゃんと変なことしてたんでしょ」
「へ、変なことって」
「はうう……」
「もうこうなったら、お兄ちゃんには責任取ってもらいますからね‼」
「責任って?」
「だから、私の就職先よ‼ まさか洞窟亭に就職しろって言うんじゃないでしょうね‼」
エライ剣幕で俺に詰め寄る沙樹なのだが、何だかうれしそうに見えるのは、気のせいだろうか。
……ていうか、沙樹まず服を着て欲しいのですが。
🚪玄関あけたら2秒でダンジョン‼~体操服の北欧系美少女と袋ラーメンでレベルUPを目指します‼~ 七生(なお)。 @10seisyatiku
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