第3話 魔法の属性を調べ隊
「きゃっ!きゃっ!(第一回!魔法の属性を調べ隊!!)」
さぁ初めて参りましょう!
この世界を生き抜くための”力”って奴を見つけにね!
あの説明不足おっさんのせいで何も分からないけど、多分属性って言えば一般的なものだと考えよう。
【火・水・風・土・光・闇】
この辺の基本6属性はある前提で試したい。
次点として雷、氷とかレアな感じとかありえるかな?
(俺が貰ったスキルは魔法の才能(ランダム)って言ってたから、もしかしたら全属性使えるとか?!)
最強の魔法使いとなった俺、なんてありえる未来を想像する。
思わずニッコニコ笑顔に溢れちゃうね!
「あら、見て貴方。ユータが笑ってるわ!」
「赤ちゃんには何が見えてるんだろうねぇ。いや~癒されるなぁ」
見えているのは俺の明るい未来だ!
さぁ、才能発掘と行くぜ!
◇
(いや、どうやって魔法なんて使うんですかね)
初手でつまづいたぞ。
あのおっさん、説明が足りないにも程がある。
魔法を使えない世界の人間が魔法の練習なんか出来るわけがない。
手足も自由に動くわけじゃない。
言葉も出ないから、左目が疼く詠唱も出来ない。
首をちょっと動かす程度で魔法なんて使えるんだろうか。
いや諦めるのは早い!
圧倒的イメージと腹に力を入れるパターンで試していこう!
どの属性から試していこうかな?
やはり光。勇者っぽい。漂う圧倒的主人公感。
使ってみたい属性ぶっちぎりナンバーワンと言えば光であろう。
(イメージだ…目の前が光るイメージ。小さな光が浮かび上がるイメージ…)
俺の集中力がどんどん高まっていくのを感じる。
(小さな光じゃまだ想像が足りない。蛍。蛍みたいな光でいい…。)
浮かびあがる蛍のような小さな光、それを意のままに動かす。
イメージは出来ている。
後は魔法の才能が助けてくれるはずだ!
腹に力を入れろ!イメージを具現化するんだ!!
気合だ!頑張れ俺!!
やがて…視界が白く輝きだした。
俺は息を止めすぎて失神した。
◇
両親がいきなり失神した俺に大騒ぎする声で目が覚めた。
(失敗か…)
心配させてしまったので、両親に満面の笑みを振りまいて無事をアピール。
現時点で蛍っぽい光は出せそうにない。
次の属性を確認しよう。
少しの失敗では挫けないのが俺の良い所。
光が駄目なら闇がある。
右目が疼き続ける属性。男の憧れ。
とある病を患った男子が誰しも考えたことがある闇属性。
勇者が駄目なら魔王がある。
そうです。私が魔王の生まれ変わり!!
馬鹿なこと言ってないで早速検証だ。
(この部屋を暗くするイメージで試してみよう)
黒い霧が身体から滲み出る感じだ。
闇は恐怖の象徴?違う!
闇はトモダチ!俺を包み込む絶対の障壁!
段々と部屋の中が暗くなっている気がする。
(イメージ…黒い霧のイメー……ジ…)
気が付けば俺はお昼寝していた。
◇
眼を覚ます。
視界が明るく、凄くすっきりしている。
とてつもない安眠効果があったんじゃないだろうか?
(いやこれは…。闇の魔法、使えたな!)
ただのお昼寝時間だったとは考えない。
限りなくお昼寝時間な気はするけど、俺は信じない!
俺は闇に包まれて生きていくのだ。
今夜試せば更なる真価が分かるだろう。間違いない。
我が母を安らかな眠りに誘って上げようと心に誓う。
俺の闇魔法に驚く母を想像し、思わず笑みがこぼれる。
圧倒的な闇魔法の才能を開花させた俺だが、まだ試すべき属性がある。
そう基本4属性だ。
この中で一番興味がありつつも、今試せないものがある。
火属性だ。
火属性の主人公感は異常。戦隊物も赤は主役だ。
赤いは強い。火は凄い。
【ファイヤーボール】この単語だけで、誰でも簡単にイメージ出来るってもんだよ。
だがしかし!
溢れる俺の魔力で家が燃えてしまえば…俺は死ぬだろう。
生後何か月で死にたくはない。
焦る必要はないからね。
歩けるようになったら安全な場所で試したい。
てなわけで、水属性いってみよう!
この世界、水は恐らく井戸水だろう。
違うかもしれないけど、井戸水って思っておこう。
水を自由自在に操れるようになれば、瞬く間に稼げるようになる。
大金持ちだ。間違いない。
定職に就きたかった俺が資産家になれる。最高だ。
何と言っても日本の技術を魔法で再現していくだけだ。
俺は水属性魔法と知識チートを使って、成り上がっていく!
さぁ、未来の資産を手に入れるぞ!
(まぁ水鉄砲のイメージが一番楽かな?)
洪水のように水を溢れさせるってのは現実的じゃないし、危ない。
水鉄砲のように少量の水を遠くに飛ばす。
これだな。
指先がホースになったような感じ。
ホースに水がどんどん流れてくる。
出口を細め、圧力を高め一気に水を開放するイメージだ!
身体から力が抜けていく感覚…。
間違いない、この感覚には覚えがある。
おしっこが出ました。
助けてママン。オムツが蒸れて気持ち悪いの。
よし、全力で泣いて不快感をアピールだ!
◇
色々な検証を重ねてきたが、もしかして根本から間違っているのではないかと不安がよぎる。詠唱必須なのかもしれない。
誰だよイメージだけで魔法とか言い出した奴!
でも1つの属性試してないからね。
まだ確実じゃない。土属性いってみよう!
土属性。響きは地味。見た目も地味だろう。
だが無限の創造性がある。
巨大な土塊を動かせば、それはもうゴーレム。
巨大ロボットへの道が開けたと言っても過言ではないだろう。
攻撃、防御、補助、拡張性。土属性はぶっちぎりではないか?
神様は分っている。この土属性で世界を変えろってことだね。
(安全そうな土属性…。砂をまくか?)
目の前の空間に魔力で砂を形成、前方に扇形でまき散らすイメージ。
おぼろげなイメージが条件を定めることで明確になる。
そう完全に「砂かけばばあ」のイメージだ。
その瞬間俺の頭に単語が思い浮かぶ!
(なんだ…?サンド…ブラスト……?)
俺の中にあるナニかが失われていく感覚。明らかに世界に影響を与えた感触。
これが魔法を使う感覚か!さっきまでと全然違うじゃねーか!
だが、イメージしていた砂のまき散らしは起きていない。
(俺の魔法は失敗したのか?)
「ん゛ん゛っ!!!」
その瞬間生じる強烈な痛み!
寝返りも出来ない身体では避けようもない、尻への一点集中攻撃!
(ああああああ!!いてえええええ!!ケツがいてえええええええええええ!!!!なんだよ!?なんなんだよ!!!!)
我慢も何もない、猛烈な痛みに泣き叫ぶしか俺には出来ない。
(助けて!助けてママン!!!お尻が痛いの!!!!)
「あら、さっきオムツ変えたばっかりなのに、ウンチも出たのかな?すぐキレイにしてあげるからね~♪………えっ!なにこれ?!」
ママンの困惑する声。オムツ交換してもらうと一気に痛みが引いた。
「きゃっきゃ!(ありがとうママン!大好き!)」
「なんでオムツの中が砂まみれなの…?誰かのいたずら?でも今は…私しかいないし…。ちょっと怖いからあの人が帰ってくるまで抱っこしておこうかしら。」
ママンに胸に抱かれ、俺は確信した。
俺の魔法は土属性だ。間違いない。
他の属性では一切起きなかった、魔力っぽいものが抜ける感覚、尻砂事件。
俺は土属性を使いこなし、この世界で生きていく!
でも、歩けるようになるまでは魔法の訓練は辞めておこう。
身動きすら出来ず尻を攻められる恐怖。
始めての魔法発動は俺に圧倒的なトラウマを植え付けたのだった。
土魔法じゃ冒険者になれないってマジですか?~不人気魔法と拳で異世界を生き抜きたい~ メガネ紳士 @meganeshinshi
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