第8話 大団円?

 「起きたならもう出て行け」


 我輩はコイツらに言う。

 3日間も大事な謁見の間で呑気に寝るなんて邪魔でしかない、かと言って運ぶのも癪だったからこうなっているのだが。

 あとすごい加齢臭が部屋に漂っている、それに遊び人の香水の強い匂いも。


 「魔王を倒すまでは!」

 「もう良いわ、やめだ。もうこれ以上は侵略せんから手打ちにしよう」

 「な、なんだと!?」

 「もう我輩を倒せんだろ。今死ぬか、戻って子供や孫に再開するか選べ」

 「私は勇者だ――」

 「爺さん、ここがどこか分からんが帰りましょう。子供がお腹を空かせてるから乳をやらんと」

 

 なお諦めない様子の勇者を止める魔法使い。

 だがな魔法使い、あんたの子供はもう成人済みのいいおっさんだ。


 「私ももう無理ぃ、メイクし直さないと耐えられない!」


 お前はもうメイクをするな。


 「帰りましょう、私もまだ今月返さないといけない賠償金があります」


 あれ? 装備売っても足りなかったの? 何年返し続けているんだ?


 「むむむ、わかった! 帰る!」

 「うむ、達者でな」


 のそのそと出ていく魔王一行を見送り、無駄に疲れた体を下ろす。


 「これからどうするんですか、魔王様」

 「そうだな、我輩もいつまでも1人というのも寂しいし、子を作るのも良いかもしれない」

 「魔王様?」


 かわいい顔をした悪魔神官に目をやる。

 今までかなり長く一緒にいてこいつのこともよくわかっているつもりだ。

 うむ、良いかもしれない。


 「どうだ?」

 「どうって――私は男ですよ……」

 「な、なんだってー!」


 侮蔑する眼差しを返す悪魔神官に我輩はきっと間抜けな顔をしていただろう。

 この最後の最後に一番の衝撃を受けてしまったのだから……。


end


 ⭐︎以下後書き⭐︎

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勇者を待ち続け60年、ついにやってきた勇者が老いぼれ過ぎて逆に焦る魔王 茶部義晴 @tyabu

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