領収書の行方 -ずぼらなボンクラ納税者-
榊 薫
第1話
異次元の新世界にある国税局では、インターネット送信で国税の申告ができます。給与や報酬を支払う側が源泉徴収で給与や売上額から、あらかじめ多めに差し引いて国税局に納税します。そのため、必要だった経費の申告は受給した人があとからやらなければなりません。受給者はインターネットに接続し、入力して送信すると還付金が戻ってくるので、データ入力は仕方がないとしても、その操作手順が毎年変わり、昨年の手順は使えません。
臨機応変で、何があっても素早く機転のきく人はインターネットに対応できます。申請できるのは機転のきく人が居る会社を育てることに役立っているのです。
今年も機転のきかないボンクラ納税者は、領収書をどこにしまったか探すことから始めました。机の上はいろいろなものが積み上げてあり、ごった返していて、ある程度の領収書は出てきましたが、高額の医療費は見当たりません。机の引き出しや鞄の底をひっくり返しても見つかりません。「最後に探したところにあるはずだ。」と気を取り直して本棚を調べ始めました。ファイル一つずつを探していると、最後の頃になって、大事にしていた「壺」の中に入れていたことを思い出しました。そこで、領収書を項目ごとに整理し、インターネットの入力にとりかかりました。作業の途中で、どこに詳細な内容別の入力方法があるのかわからなくなりました。前のページを変更しようと思って、前に戻ったところ、せっかく入力した数値が消えてしまいました。そうなると、また入力しなければなりません。申告書を先に作ってから決算書を作ると、その前にせっかく作った申告書の内容が消え、再度入力しなければなりませんでした。
そこで、毎年同じ操作ではないのはなぜか、インターネットで調べてみました。
たどり着いたのは、自分と同じように嫌気を誘うことが目的ではないかという回答です。「作業が嫌になると作業を中断し、確定申告したくなくなる。」とのことです。そうすると、「いったん源泉徴収したものは還付されません。税務署にとっては税の増収に繋がります。一部の政治家の政治資金規制法に目を光らせるより、不特定多数の一般庶民を対象にすれば、ひとりひとりは少額でも塵が積もれば山となって税収が上がるはず。」とのことでした。
また、「毎年変えることで、必要経費が発生して計上した予算を消化することができ、予算を多く使うほど、大事な仕事をしていることになるので、その部署の存在感を示すことができ、組織維持に必要な雇用人数なども安泰に継続できる。」とありました。
そこで、機転のきかないボンクラ納税者も気が付いて、奮起一転、苦労もめげず、何度も書き直すことで送信に漕ぎ着けました。
来年こそ操作手順が変わらないこと神に祈りながら今年の作業を終えました。
領収書の行方 -ずぼらなボンクラ納税者- 榊 薫 @kawagutiMTT
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