第2話(大学生視点)

「あっ、、」

 4階に差し掛かった頃、ブルっと体が震えたかと思うと、内股やらベルトやらに精を出していた手たちが、一気にソコに集結する。顔はエレベーターの階数表示の方を向いているが焦点が合わず、こねくり回す余裕さえもないのだろう。手のひらでガッチリとソレを上下にグニグニと押さえつけている。

 チーン…

「っふ、んふっ、んんんんっ」

 お目当ての階に到着してからも、膝を何度も重ね合わせながら、足踏みを繰り返し、尻を前後に揺する。もじもじダンスは止まることはない。

「あの…」

飛び出していくかと思って開くボタンを押してから、10秒が経った。そろそろ波を抑えて出てもらわないと困る。

「あっ、あ、すみ、ません、さよなら!!」

ようやく彼は気づいたのだろう。耳まで真っ赤に染め上げ、そそくさと降りる。両手で押さえるのを見てしまったが、彼にはそんなことに構っている余裕はない。ソコを押さえて、あの小学生の頃のように腰を突き出し、内に足を出しながら、出来る限りの、しかし漏らさない程度の急足で去っていった。

(間に合うといいな…)

心の中でエールを送り、また会うと気まずいため、ゆっくり歩く。

(おいおい、大丈夫かよ)

俺の部屋のドアに近づくたび、その懸念は確信に変わる。彼はまだ、部屋に入っていなかったのだから。

「っふっ、ふぁっ、んんっ、かぎ、かぎぃっ、」

どうやら鍵が見つからないらしい。片手で性器を、片手で重いかばんの中を。でも、我慢に必死で鍵は見当たりそうにない。きっとたくさんの教科書に紛れて、鞄の奥底で眠っていることだろう。

「なんでっ、ないのぉっ、」

そう小さく呟いた彼は、重いかばんを降ろし、しゃがみこんでそれを探し始める。踵でソコをグリグリとしながら。片手は離せないまま。

上半身は上下に揺れて、乱雑に中をかき回す。ぐちゃぐちゃになっているであろうかばんの中。当然そんな中切羽詰まった人間が簡単に見つけ出すなんてのは困難なわけで。

「んぅぅぅぅっ、」

もじもじもじっ、ぎゅううううううっ、

ついにしゃがんだまま、両手をソコに持っていく。もう彼の尿道はおしっこでいっぱいなのだろう。かかとにぐいぐい押し付けて、力一杯の両の手でソコを押さえつけている。軽快な指先で押さえる余裕も残っていないのだろう。ちぎれるんじゃないかってぐらいの力。動きは逆に少ない。というか微動だにしない。きっと性器を持ち変える瞬間でさえ、危ないのだろう。

 もう、漏らす寸前だ。

「なあ、うちでトイレするか?」

もう見てられなくて、思わず声をかけてしまった。

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