未来視探偵の超推理
天野 純一
第1話 未来視探偵の超推理
「犯人は君たち三人の中にいる!」
名探偵・
指された
一郎と二郎が同時に叫んだ。
「「俺は犯人じゃない!」」
三郎も負けじと、
「僕だって違う!」
と叫んだ。
蓮は何度もうなずいているが、三人の言い分を聞いているというよりは、自分の名探偵らしさに惚れ惚れしているだけのようだった。
彼は人差し指を立ててカッコをつけながら、聴衆の前を練り歩く。
「三人のうちの誰が犯人としても決め手に欠けるこの事件。この名探偵・明日見蓮が鮮やかに解決いたしましょう。今日子君、準備はいいかい?」
「バッチリです」
私は小さな丸薬を差し出した。
「ありがとう、君は頼りになるワトソンだ」
蓮は丸薬をゴクリと飲み込んだ。しばらくして彼は目を閉じ、集中し始めた。
「見える……見えるぞ……! 1分後に事件が解決している未来が……!」
彼の二つ名は、未来視探偵。未来で見えたことを参考にして事件を推理する、ノックスもヴァン・ダインもびっくりの超能力探偵である。
蓮が未来視への集中をやめて、今度は思考モードに入った。
「ダメだった……解決の材料は何も見えなかった……。しかーし!」
彼は三つ子のほうをニヤリと見た。丸薬を飲んでからちょうど1分後だった。
「犯人は三郎! お前だ!」
三郎はうろたえた。
「しょ、証拠がないだろ!」
「いーや、証拠はある。三つ子といっても、一郎と二郎は一卵性双生児だが、お前だけは別の卵子、つまり二卵性双生児で生まれてきている。ということはどういうことか分かるかい、ワトソン君」
急に話を振られた私は、流れるように答える。
「いいえ、さっぱり分かりません」
とりあえず「分かりません」と答えておけば蓮は機嫌が良くなる。楽な仕事だ。
案の定、彼は満足そうな表情で声を大きくした。
「よろしい。ではオイラの口から説明してあげよう。三郎が犯人だと確定するのはずばり、オイラが1分後に解決できるという事実が分かっていたからだ」
「ほう……もう少し分かりやすくお願いします」
私は慣れた口調でさらなる説明を求めた。
「いいだろう。一郎と二郎は見た目も一緒、性格も一緒、いつも一緒で、違いが一切ない。ということは、オイラは絶対にどちらが犯人なのか特定することはできない。でもオイラは未来で特定していた。すなわち三郎が犯人だということなのだ!」
「やられた……」
三郎は地に膝をついた。
未来視探偵の超推理 天野 純一 @kouyadoufu999
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