聖堂に響く歌声は、神に捧げる祈りだった。
誰もが敬い、誰もが憧れた聖女フィアンナ・ユーリシア。
その「奇跡のような存在」は、ある夜、突如としてこの世から消えた。
儀式の最中、密室の中で、胸を刺されて。
王国随一の敬虔な場で起きた殺人。
動揺と混乱を押し隠す中、聖騎士団副団長カインは密かに調査を命じられる。
かつてはただの聖女の信奉者でしかなかった彼が、剣ではなく「知恵」で真実を追うとき、静かに――けれど確実に、嘘と陰謀の影が浮かび上がっていく。
決して破られるはずのない聖堂の封印。
民を守るための鉄格子、結界、施錠。
その完璧な「密室」の中で、なぜ、どうやって、誰が聖女を殺したのか。
悲しみを背に、怒りを封じ、ただ一つの真実のためにカインは動き出す。
愛する者の死の謎を解くために。
信仰と陰謀が交錯するこの王都で、心を燃やしながら。
これは、一人の聖騎士が、
「神の失われた聖域」でたどる、祈りにも似た捜査の物語。