極東帝国における今後の対怪異に向けた提言

——前文

 本文は例年増加し続ける怪異に有効な対抗を図り、昨年の東京と同様の悲劇を繰り返さないため、極東帝国政府に対して、異端審問所より怪異への新たな等級認定基準およびそれに伴う軍備再編に関する提言である。また9月8日を以て本文における怪異等級認定基準に基づき、異端審問所を擁する全ての国家に対して同様の提言を行う。


——怪異の等級基準について

・五級怪異

 最も弱い怪異であり、知性が低く魔術を扱えないものをこの等級とすることを提案する。武装した非戦闘要員1人と同等として戦力に計上、これに対処することを求める。


・四級怪異

 ある程度の知性と魔術、もしくはその脅威と同等とされる身体能力を持つ怪異をこの等級とすることを提案する。完全武装の軍1小隊と同等として戦力に計上、これに対処することを求められる。


・三級怪異

 高度な魔術(対象への追尾や呪詛などの単純な物理現象の範疇を逸脱した効果を持つもの)を扱い、通常の魔術師を超える身体能力を持つ怪異をこの等級とすることを提案する。完全武装の軍1中隊もしくは『魔導甲冑』1機、異端審問官1人のいずれかとして戦力に計上、これに対処することを求める。


・二級怪異

 三級に比べ更に高度な魔術と高い身体能力を持ち、人に極めて近しい外見、もしくは二つ以上の核が確認された怪異をこの等級とすることを提言する。完全武装の軍1大隊もしくは魔導甲冑10機、異端審問官10人、上級異端審問官1人のいずれかとして戦力に計上、これに対処することを求める。


・一級怪異

 単独で一般的な都市の戦力を上回る戦闘力を持ち、人間と同一の外見を有している怪異をこの等級とすることを提言する。完全武装の軍1連隊もしくは魔導甲冑50機、異端審問官50人、上級異端審問官5人、使徒1人のいずれかとして戦力に計上、これに対処することを求める。


——軍備再編について

 一般的な軍備増強のみならず、軍においても対怪異戦を主眼に近接白兵戦を専門とする兵科を編成すべきである。これに伴い、より優れた白兵戦用魔道具を各企業と異端審問所工房が協力開発し、これを供与する。また、特に優れた人員を異端審問所へ出向させ、これからの軍と異端審問所の連携を密にする素地を作ることとする。

 加えて『技術水準規定及び軍備削減に関する提言』の見直しと共に、これまで制限されていた魔導甲冑保有数を2000機から6000機に改定し、一部禁忌指定技術の軍民での利用を許可する。なお、それに伴い開発された新規技術は通例通り、異端審問所の審査を行うものとする。


             1989年8月15日 異端審問所極東支部支部長 織田信長

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異端審問所記録文書集 舞竹シュウ @Syu_Maitake02

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