第3話 異変

俺は本日もいつものルートで、スラム街を歩いていく。


俺がルートとしている場所はスラム街に点在している複数の酒場が比較的密集している路地裏をメインに歩いている。


何故俺が酒場中心なのかというと、他にも食べ物を販売している場所はあるのだが、そうゆう所には、よく知らないが偉い人?を守る人が店の前で立っている事が多く、少しでもそいつらの視界に入ってしまうと命の危険性があるからだ。


俺自身はそのような体験をしていないが、実際にそいつらに殴れたり、武器で切られたりしている奴らを見た事がある。

それが原因で死んでしまったやつも…


俺が聞いた話によれば、そうゆう所で捨てられるゴミは酒場の物とは比較にならないくらい美味しいとの事。


しかし、先程も言った通りで、そうゆう所に行くには自分の命をかける必要があり、流石にそこまでして美味しい食べ物を食べたいとは俺は思わなかった。


寧ろ俺には美味しいものというのが理解出来なかった。

俺は物心ついた時から酒場のゴミしか食べてこなかった人間でそれが美味しいのか不味いのかも分からないような人間なのだから。


だから、美味しいものを食べたいが為に命をかけて行動をする人間が俺には理解が出来なかった。 

なんなら、内心バカだなとも思っている。


そんな事を考えながらいつもの道を歩いていると、何か道を塞ぐものが目に入った。


俺はそれが目に入った途端、直ぐに注意深く周囲を警戒したが、道を塞ぐもの以外は他に異変はなく、内心いつもの事かと思いながら、警戒を解いてその道を塞ぐものに近く。


近づくと段々と輪郭がはっきりとしてきて、道を塞いでいたものの、すぐそばまで来たら、やっぱりいつものやつかと思った。


道を塞いでいたのは、俺より少し年が小さいであろう少年が横たわっていて、一目見ただけで、瀕死の状態だと分かる有様だった。

何処か出血しているのだろう、服にはかなりの血がついており、右腕も曲がってはいけない方向に曲がっている。

そして、呼吸も瀕死の人独特の呼吸音がしており、後2、3分もすればこいつは死ぬだろう。


ただ、そのような状態の少年を見ても俺の心には何も変化はない。

むしろ、俺のルートの邪魔とさえ思っていた。


だから、俺はその少年に何かするわけではなく、ただ横を通り過ぎて奥の方に進もうとした。



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代償代行人、美しき世界を知る アイア @aiamaru

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