第3話 「とにかく、あの子は恩知らずのろくでなしよ。」

 ひよりと別れてから数週間後。デイリーは、魔法学校の中庭の椅子に腰かけながら呟いた。


「あー退屈。」


 デイリーは不満そうな顔をしながら腕を組んだ。


 そこに一人の女性がやってきた。その女性は金色の綺麗な髪をしていて、少し幼い顔立ちで、デイリーと同じ学生服を着ていた。


「あっ!ごきげんよう、デイリー!あなたも休憩中?」


「ん?…ああ、なんだ、リリアか。ごきげんよう。」


 その女性ことリリアは、不満そうな顔をしながらデイリーに近づいてきた。


「ちょっと!なに?その不満そうな顔!せっかく、正ヒロインがお友達の悪役令嬢に話しかけてるのに…って、あれ?」


 正ヒロインのリリアは、プンプンと怒りの表情を浮かべながらデイリーに文句を言っていたが、あることに気づいて不思議そうな表情に変わった。


「デイリー、私のこと名前で呼んだ?リリアって。」


「そうだけど?ってか、当たり前でしょ?名前なんだから。」


「まあ、そうだけどさ。デイリー、いっつも私のことひよりって呼んでたじゃない?ほら、プレイヤーが私にひよりって名前つけたから。」


「ええ、そうね。このゲーム名前変えられるからややこしいのよ。プレイヤーがゲームしてない時は、あんたの名前のリリアって呼び方でいいけど、プレイヤーがゲームしてる時は、あんたのことひよりって呼ばなきゃいけないし…。じゃあもう、ややこしいからずっとひよりって呼ぼうと思ってたけど…。」


 デイリーは話の途中で足を組みなおした。そして、視線をリリアから別の場所に移して言った。


「諸事情によりやめることにしたわ。」


「私が、プレイヤーがゲームしてない時はリリアって呼んでって、何回言っても呼び方が変わらなかったのに…。なんかあったの?」


 リリアは首をかしげながら言った。


「まあ、いろいろよ。」


「ふーん…。あ!そういえば聞いたよ!デイリー、ゲームの外に行ったんでしょ!禁止されてるのによくやるよね~。確か、プレイヤーがゲームをつけたまま放置することが多いから、それを注意しに行ったんだっけ?どうだった?」


 リリアは目を輝かせ、前のめりになりながらデイリーに聞いた。デイリーは、そんなリリアに若干困惑しながらも答えた。


「どうって…。見ての通り失敗よ!ワタクシが注意してからゲームをつけたまま放置することはあまりなくなったけど、今度はゲーム自体をたまにしかやらなくなったわ!ひよりのやつ、どうせ好きな男と乳繰り合ってんのよ!まったく、誰のおかげで仲良くなれたと思ってるのかしら?あの恩知らず!」


 デイリーは強い口調で言った。


「ひより?…ああ、そういうことね!」


 リリアは、何かを察した後、そのまま続けた。


「ええ?素敵じゃん!ひよりちゃんとその男の子、上手くいくと思うよ!だって、ひよりちゃんってたぶん一途でしょ?ほら、この乙女ゲームでも、1人の男の子の好感度しか上げてないもん!確か…レオン君だっけ?このゲームじゃ一番不人気らしいのになんでだろうね?」


「あなた…けっこうひどいこと言うわね。」


 リリアをジト目で睨んだ後、デイリーは少し微笑んで続けた。


「まあ、どっかの誰かに似てるからじゃないかしら?知らないけど。」


 リリアは、不思議そうにデイリーを見つめていたが、やがて「そうなんだ…!」と言って微笑みを返した。


 しばらくの沈黙の後、デイリーはゆっくりと椅子から立ち上がり、伸びをしてから言った。


「とにかく、あの子は恩知らずのろくでなしよ。そして、あの子がゲームをしないからワタクシ達は暇になり、日々不満が募っていくのよ。」


「ふーん。そういう割にさっきから全然不満そうに見えないんだけど、デイリー?」


 ニヤニヤしながらリリアが言った。


 それに対してデイリーが、少しだけ口角を上げて言った。


「不満よ。だからまた注意しに行こうかしらね。」

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悪役令嬢がわたしを操り、好きな男の子に勝手に告白した…しかも超絶上から目線で。 正妻キドリ @prprperetto

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