第2話

「なるほど。人の血が吸えなくて死にそうだった、と」

「はい」


本物の「吸血鬼」であるそらだが、今まで吸血鬼であるということを隠しながら生きていたため、吸血鬼の高い身体能力を活かして献血の血を拝借していたそうなのだが、、、


「うっかり人間なら死ねるくらいの怪我を負ってしまってしまいまして。

それの再生にエネルギーをつかったので、死にかけでした。

あと数時間あのままだったら死んでいましたね。」

危なかったです、と微笑んでいる彼女を見て思う。

・・・そんなことある?

それに、死にかけたっていうのによく笑えるなぁ。

う〜ん、まぁ、吸血鬼だし(?)そんなものかな?


「・・・とりあえず、そらはもう元気になったってこと?」


「はい。ありがとうございました」


「まぁ、元気ならいいや。それで、これからのことなんだけど」


「?」

首をこてんと傾けてこちらを見つめてくる。すごくかわいい。

・・・じゃなくて。


「元気になったならこの家にいるより、もとの家にいたほうがいいんじゃ」

と言ったら、そらはすごく暗い顔になってしまった。

やっぱりワケアリかぁ・・・


「いやいや、大丈夫大丈夫。そらが居たいだけ居てくれて構わないよ」

と言うと、そらは嬉しそうにしたが、その後、申し訳なさそうに

「でも、お金は」

と言った。

どうやら、お金のことを心配しているらしい。

でも、

「大丈夫だよ、お金には困ってないから」

今は家にいない両親がちょっと引くぐらいお金を送ってくるので、全然大丈夫。たった二人じゃどう頑張っても使い切ることなんてできない。

と伝えたところ、

「あなたの両親って一体・・・」

と言われた。

正直なところ、私も両親のことを全然知らない。

幼いころに私を置いてどこかに行ってしまったのだ。

まぁ、定期的にやばい額のお金を送ってくるあたり、死んではいないのだろうけど。


「そらがこの家に住むなら、いろんなものが必要になるなぁ」

といったら、やっぱり申し訳なさそうだったので、

「大丈夫、大丈夫」とひらひら手をふった。

___でも、そらがフラフラしながら歩いていたところはいろんな人に見られていたはずだ。目立つ髪と目の色なので、そらと一緒に買い物をしにいくわけにはいかないだろう。あれだけ死にそうだったのに、たった1時間程度で元気になるわけがないのだ。

しかも、今から日用品を買いに行くような時間ではない。

もともと部活帰りだったうえに、そら関連で1時間くらい時間をつかったので、日は沈み始めていた。

ふむ。こんなときに、普通なら家にあるものを使うのだろうけど・・・


「星平!ちょっとこっちに来て!」

星平。私の家で雇っているメイドさんである。両親は、お金のくだりでわかると思うが、超お金持ちだった。

それだけだったらいいのだが、住んでいるところも無駄に広かった。

まだ幼い私に屋敷を管理するということはできないので、両親が信用・信頼していた唯一のメイドである星平に、幼い私の面倒をみるよう頼んだようだ。

__あれ?星平って今何歳・・・?

まぁいいや。世の中には知らないほうがいいこともあるからね。

星平は、この無駄に広いお屋敷を一人で管理しているスーパーメイドだし、私が呼べばすぐにとんでくる。なんでそんなことができるのかと聞いたことがあるが、

「メイドですので」と言われた。メイドってなんだっけ・・・


「およびですか、お嬢様」

お嬢様呼びしてくるところだけが不満である。


「星平、この娘、そらがこの家に住むために必要なものをすべて買ってきて」

「はい、かしこまりました。30分で帰ってまいります」

彼女が言うなら、きっと本当だろう。メイドに不可能はないのだ。


「あの」

星平についてかと思ったが、違った。

そらはいつの間にか立ち上がっていて、ペコリと頭を下げた。

「助けてくれて、ありがとうございます。そのうえ、家に住まわせてくれるなんて

、感謝しかありません。この恩は、どこかで必ずかえします」


「いやいや、頭を上げてよ。それに、そらは私よりも子供なんだから、そんなことを気にしないで。」

そう。見た目通りの年齢なら、彼女はまだ中学生くらいだろう。

その割には大人びた発言をしているのは、きっとそれができないといけない環境にいたせいだと思う。

だけど、私の前では年相応の子供としての面をだしてもらいたい。

___私、年寄臭いなぁ・・・


「いえ、それでも・・・」

なおも食い下がってくるそら。

しょうがない、この手は使いたくなかったんだけど。

・・・主にそらの気持ちを考慮して。


「お風呂はいろうよ」


「いや、あの・・・」


「そらがどれだけ遠くからきたのかわからないけど、だいぶ汚れてるから」

というと、そらは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

よし、話をずらせた。


「うぅ、わかりました・・・。お風呂にいきましょう」

といって、私の手をつかんでいこうとする。


「いや、なんで?」


「私だとお風呂の場所がわからないのと、あと・・・」

あと?なんだろう。どんどん顔が赤くなっていっているけど。


「一緒にお風呂にはいるのでは?」




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虚飾の少女 白崎紅音 @sirosakiakane

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