第14話昔話

「なにこれ昔話?」

そこに落ちていたのは一冊の昔話の本だった。

───むかしむかし、あるところに山の麓で暮らす父、母、姉、妹の4人がいました。

一家はとても貧しかったが、それでも4人は貧しいながらも幸せになろうと頑張っていました。

その日までは───

「パパ!ママ!聞いて聞いて!1人で薪を割れたよ!」

妹はお父さんとお母さんの元へすぐさま走り、ぴょんぴょんと跳ね身体中でその喜びを表現していてとても愛らしい。

「あら!頑張ったわね」

「凄いじゃないか!成長したな!」

「えへへ〜」

妹は頭を撫でられるととても喜んだ。

もし妹に尻尾があったならばぶんぶん振っているだろう。

それくらい妹は喜んでいて、見ているこっちまでいい気分になるほどだった。

「お前もよく頑張ったな」

そう言いお父さんは私のことも撫でてくれた。

「ううん……今回は妹が凄く頑張ってたから私はいいよ。妹だけを撫でてあげて?」

そう言い残して私はお母さんがやっている料理の手伝いに行った。

「いいのよ?手伝ってくれなくても」

「私がやりたいだけだから気にしないで」

そう私が言って、料理を手伝って、皆で今日の出来事を話しながらご飯を食べている。

その機械化された毎日だけでも十分私は幸せだった。

私はそれだけで満足だった。

でもお父さんとお母さんはそうはいかなかったらしい。

「───か?」

「それなら───を───に置いていこう」

その日私は夜遅くに2人でコソコソ話しているお父さんとお母さんが気になってドア越しに聞き耳を立てていた。

ドアを完全に閉めた状態だと、聞きにくかったので、少しだけ開いて聞こうと思い、ドアに手をかけた。

次の瞬間私はドアを思いっきり開けてしまった。

「な!?」

「!?どっどうしたの!?こんな夜遅くに……」

2人は私のいきなりの登場に動揺しながらも質問をしてきた。

「……トイレに行こうと思ったんだけど〜音が聞こえて……見に来ちゃった……」

私は動揺を隠しながら、嘘をついた。

「話は聞こえてない?」

お父さんとお母さんがとんでもない形相で問い詰めてきたから少し怯えながらも言葉を捻り出した。

「うん……全然聞こえなかった」

「そう……ならいいわ!さあ!もう夜も遅いから寝ましょう!」

2人と共に寝室へ行き、その晩はモヤモヤを抱きながらも、隣に2人が居たのでどうしようもなくとりあえず就寝することにした。

───私はその決断を生涯後悔するだろう。

あの時問い詰めておけばよかったと。

翌日の朝、妹は何処にもいなかった。

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深徊 キサラギ @mousouzokuatenai

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