夢見るネッシー第1話

@peacetohanage

第1話

エメラルド色の水面から、ちょこんと顔を出したのは彼の有名なネッシーでした。

「おい!ネッシー、こんにちは!」

そう呼び掛けるのは釣り人のジョンです。

ジョンは愛犬のシュナウザーと一緒にボートに座っています。

「ご機嫌よう!ジョン、釣りは順調ですか?」

ネッシーは問い掛けます。

ジョンは魚の入ったバケツを傾けます。

「ほら、見てくれ!順調さ、後小一時間は釣ろうと思う」

シュナウザーも賛成を表明する為に吠え立てます。

そこへ湖をぐるりと囲む林から、一羽の小鳥が飛んで来ました。

ラピスラズリ色をした美しい小鳥です。

ネッシーの頭頂部に着陸をします。

「こんにちは!ネッシー。今日の調子はどう?」

「ご機嫌よう!小鳥さん。今日も調子はまずまずです。はぁ、僕も君みたいに空が飛べたならもっと調子は良くなるのに」

「そう肩を落とさないで?あなたはこの広い湖を自由に泳げるんだから」

「見てご覧よ?この大空はもっと広大さ。僕の知らない世界はまだまだ沢山有る」

「それなら私だって湖の世界については無知よ?水中にはどんな世界が広がっているのかしら」

「ねぇ、空はどんな風なんだい?」

ネッシーは空を仰ぐと、小鳥は頭頂部から飛び立ちます。

「空には天使が沢山住んでいるのよ?そうして私達生き物によく矢を射っているの。恋の矢よ?」

「僕も矢に射られてみたいな。恋をしてみたい」

「さぁね?あなたにはどんな彼女が見つかるかしら…」

小鳥はそのまま羽ばたき、林へと帰ってしまいました。

ネッシーが水面で日光浴をして遊んでいると、ちょうど小一時間経った頃、ジョンは岸辺を目指します。

ジョンは釣り人ですから、また明日も釣りをする為にボートを出すのです。

ネッシーはそれを知っていましたから、彼らはお互いにさようならを言いませんでした。


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢見るネッシー第1話 @peacetohanage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る