第12話

 積もった雪を掻き落として、オレはベンチに腰掛けた。

「これからどうするんだ、ヨシノ」

 オレは傍に突っ立っているヨシノに訊ねた。

「そうだね。つめたっ!」

 一人分の空間を空けてヨシノもベンチに腰掛ける。

「オリジナルの名前を聞いた。遺髪も持ってきた。だから、僕はオリジナルの住んでいた実家へ行くよ。遺髪を届けに。僕の顔を見せに」

「そうか。それがいい」

「で、よかったら、なんだけどさ」

「なんだ?」

「タカ兄も一緒に来てくれないかな……。ちょっとだけ、怖いんだ……」

「フフフ」

「なんだよ、笑う事ないじゃん!」

「そんな事か。お安い御用だ。任せておけ」

 オレがそう言うと、ヨシノの顔がパァッと明るくなる。


「あ、また雪が降って来たよ」

 桜が咲くにはまだ早い雪化粧の公園でヨシノははしゃぐ。

「そろそろ行くか」

 そう言ってオレは立ち上がり、ヨシノとベンチを見下ろす。


 相変わらず背もたれに書かれた牛乳屋の名前は読めないが、もう、この寒さでも頭皮が引き攣れる事はない。


 オレとヨシノは雪の降る公園をゆっくりと歩き出した。

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Unnaturals ハヤシダノリカズ @norikyo

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