朝日に逆らい

屑木 夢平

朝日に逆らい





 大津通を北上するトラックが

 クラクションを鳴らしながら軽自動車を追い越していく

 そのけたたましい音に空っぽな胸を叩かれた僕は

 遠い銀河の星が消える瞬間を見逃した


 金シャチ横丁の明かりもなくなった二十二時

 俯いて溜め息まじりの背中に呼びかける声を錯覚して振り返れども

 友達ひとりもいないこの街では見知った顔に出会うこともなく

 封鎖された駐車場のチェーンが寂しげに揺れるばかり


 眠れない夜の残骸を引きずり彷徨う明け方

 名古屋城の堀沿いの工事現場では

 首長竜みたいな大型クレーンが

 光に背を向けて涙色のフックを垂らしている


 僕もまた朝日に逆らい

 夜の名残を留める方角へひたすら歩き続け

 それでもやがて追いついてくる金色の波が

 捨てきれずにいる願いを呑みこむそのとき

 失望の汀に弱々しい七色の輝きを見た

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

朝日に逆らい 屑木 夢平 @m_quzuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ