第三話 図星
あっという間に一週間が過ぎた。
またいつもの日々が再開した。
木曜日と金曜日は塾があったからまた一緒に帰ったが、あんな短い時間では、満足にイチャイチャすることなどできない。それに今ではその気も起きない。ただ一緒に帰るだけ。
他愛無い会話に何故だか腹が立った。あぁ、来たかこれ。雅くんの何とも思っていない顔に金曜日は少しイラっとした。
土日も何もなく、布団にくるまり漫画を読んで過ごしたし、週明けからも宿題の山、授業の波をただ超えながら時間が過ぎるのをぼーっと見ていた。
お昼休み、文化祭実行委員の活動を終えて自分の教室に戻ると、私は机に顔を伏せた。
「はぁ……」
大きなため息が出た。
「どしたの、
「なんでもない」
隣の席の
「やめなよ、そいつ今キテるだけだから」
「琴美やめてよ、本気で心配されちゃうじゃん」
「そりゃ心配するよ」
琴美はくくっと嫌な笑いを浮かべ、優奈は私の腰をさする。
私は「大丈夫だから」と言って優奈の手を退ける。
「そう?」
「本当に大丈夫」
「彼氏は心配してくれないの?」
琴美がまた余計なことを言う。
「え、どうなの?」
優奈がそれに乗っかって訊いてくる。
うぅ、面倒なことになった……。
「別に、気付いてないんじゃなーい?」
私は適当に答えた。
「ええ、本当に??ありえない!」
優奈に火が点いてしまった。
「彼氏ならちゃんと心配してほしいよね!」
「まあねぇ」
優奈はお腹をさする私の気持ちを代弁している気らしい。残念ながら私はそんなに思ってないけど。もはや諦めである。
「でも、大丈夫。今回は大したのじゃないから。キツイ時は言うし、その時は心配してくれるから大丈夫よ」
「えー、それでいいの??」
「うーん、まあ」
まあ、よくはないけど、諦めだよねぇ。
気だるげに返答していると琴美が言う。
「私ならそういう気の遣えない男子は切るわ」
「うわぁ、ドストレート……」
「そりゃそうよ、面倒だもん」
私も優奈も苦笑いする。
「でもさ、嫌な相手と付き合っててもつまらないだけじゃない?」
「まあね、でも雅くんのこと別に嫌じゃないから」
「そうだけど、最近マンネリ化してるって話じゃない」
「まあ、そうだけど……」
「浮気でもしたくなっちゃうんじゃない??」
肩がビクリと揺れた。
「馬鹿言わないでよ。そんなことするわけないじゃない」
「琴美、何言ってんの?そうなの?紬?」
「あぁ、もう、優奈が信じちゃうじゃん」
琴美がくくっと嫌な笑みをさらに強めた。
「でも、紬って面食いじゃん」
「うるさい」
「それに、元々付き合った時も勢いがあったじゃん?その勢い収まったら紬の熱も引いちゃうんじゃないの~って」
琴美は鋭い。まさしくその通りの状況だ。
でも、浮気は……。
「琴美、酷いよ。紬はマンネリ化に困ってるだけなんだから」
なぜだか胸がモヤモヤした。
「どうかなぁ、知らない男とデキたりして」
「琴美!」
「冗談よ冗談。でも彼氏と紬、両方忙しいから色々大変だよねぇ。私はそういうのは真っ平よ」
チャイムが鳴った。お昼休みが終わって午後の授業が始まる。
浮気……。
別に、浮気じゃない……。
私の好きな人は、雅くん。
うん、すぐに浮かんでくる。
なのに、
心がどこか落ち着かない。
あれは、浮気じゃないから、大丈夫……。
今週末、私は沢村君とお昼ごはんを食べに行く。
紫の花に勇気を 川野狼 @Kawano_Okami
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。紫の花に勇気をの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます