ロリに胸を求めるのは間違っている
Ria
第1話
俺の名前は桑瀬鋼(くわせこう)。
一般に”陰キャ”として分類される高校生だ。
これといった取り柄も無く、友人もそこまで多くはない。
だが、俺には他者には課されていない特別な使命があった。
それは……
俺が全ての少女、あるいは幼女を見守るという使命を持っているということだ。
「ママー、あのお兄ちゃんがこっち見てるー」
「シッ!見ちゃいけません!」
俺が見守ってやっているというのに、なんとも失礼な小娘だ。
まあ、少し成長すれば俺の偉大さがよくわかり、「いつもありがとう!大好き!」だの「私をお嫁にもらってください!」だの言ってくるに違いない。
「ママー、あのお兄ちゃん一人で笑ってるよー」
「見ちゃ駄目って言ってるでしょ!」
「やれやれ、人気者は辛いぜ」
何を言っているのかは聞こえなかったが、少女が俺に指を指してきている。
きっと俺の噂をしているのだろう。
「おーい、鋼ー!」
俺が少女を見守っていると、後ろから話しかけてくる一人の少年が居た。
「相変わらずのロリコンだな」
こいつの名前は東西勝斬(ひたたしかつき)。
俺の数少ない友人であり、小学生のときからの幼馴染でもある。
「俺はロリコンではない。あくまで見守っているだけだ」
「嘘つけ。どうせ将来「いつもありがとう!大好き!」だの「私をお嫁にもらってください!」だの言ってくれたらとか思ってたんだろ?」
「何故それを……」
こいつはエスパーか何かなのだろうか。
「ていうか、早くしないと遅刻するぞ?急いだほうが良い」
「もうこんな時間か。仕方ない、さらば少女たち!」
少女を見守る使命があるとはいえ、学校に遅れる訳にはいかない。
そうして俺たちは学校へと走っていった。
「よーし、ギリギリセーフ」
時刻は8時ジャスト。
ギリギリ間に合ってよかった。
「ギリギリじゃ駄目ですよ?」
「おはよう、出水さん」
彼女は出水星華。勝斬と同じく俺の数少ない友人で、今年から俺と同じ学年になった人物だ。
「星華おはよー」
「おはようございます、鋼君」
「聞いてくれよ出水ー。朝鋼がまた道行く少女の観察を……」
「やめろ!幼女にするぞ!」
「何だその脅し⁉」
星華にこの手の話をすると変に絡まれるから勝斬には黙っていてもらわないと困る。
「そうなんですか、鋼君?私じゃ駄目なんですか?私のことならいくらでも見ていいのに……。ねえ、鋼君。私じゃ駄目なんですか?駄目なんですか?答えてください!」
始まった。これがあるからこいつに話を聞かせちゃいけないんだ。
「俺はお前みたいな胸がデカいことしか取り柄のないロリに興味はない」
星華は身長は低いから俺好みではあるが、この女には残念な点がある。
「そんな……、酷い!鋼君ちっちゃい女の子好きじゃないですか!何で私だけ仲間はずれなんですか?」
「お前はちっちゃいくせにデカいから嫌なんだよ!」
そうだ、胸がデカいのだ。
胸なんてこの世に存在しなければいい。
俺はロリ巨乳という存在をあの日以来酷く嫌っている。
小学校時代、俺はこいつに惚れていた。
初恋だった。
当時はそこまで仲良くなかったが、星華自身も俺に気があるような素振りを見せていた為、人生の勝者を俺は確信していた。
事件は、俺たちが中学生のときに起きた。
星華は成長期に入り、三年間でかなり大きくなった。
胸が。
それ以外は小学生の時から何も変わっていない。
ただただ胸がデカくなった。
卒業式の日、俺は遂に星華から告白された。
あと三年早く告白されていれば間違いなく了承していたが、そんなたらればの話に意味はない。
「ごめん」
俺は断った。そしてそのまま続けた。
「お前に胸がなければな」
と。
星華の小さなフォルムを、あどけないその言動を愛していた俺は、酷く絶望した。
中学以降、俺は誰かを心から信じることができなくなった。
それと同時に俺に神は使命を与えた。
――――世の中の少女たちがあのようにならないように見守りなさい。
それ以来、俺は一日たりとも欠かすこと無く少女たちを見守り続けている。
「じゃあ、どうしたら私のことを受け入れてくれますか?」
そんなもの決まっている。
「胸がなくなったらだ。そんなことお前だってわかってるだろ」
俺は胸のない少女が、かつての星華が好きだ。
それは今でも変わっていない。
「わかり、ました……。今日は諦めます」
星華が消え入りそうな声でそういったのと同時に、先生の声が教室に響いた。
「お前ら席につけ―!」
その声を合図に俺たちはそれぞれが自分の席に戻る。
因みに俺の席は窓際一番後ろの席で、勝斬は俺の前、星華は廊下側前から三番目の席だ。
「お前、本当に酷い性格してるよな」
「何のことだ」
俺は今日酷いことなんてした覚えは無いのだが。
「珍しく星華泣きそうだったぞ?あんなに可愛い娘を泣かせるなんて、俺にはお前の気持ちが理解できんな」
星華が泣きそうだった?
ふざけたことを言うな。
あいつはそう簡単に弱い顔を他人には見せない。
きっと勝斬の見間違いか何かだ。
そんなことより……
「だったらお前があいつを貰ってやれ。俺の手には余る」
「そういう問題じゃないんだよなあ……。まあ、鋼の性格じゃ一生理解できないと思うけど」
「失礼な」
他人を馬鹿にすることは最も恥ずべき悪徳だと俺の親父は言っていた。
勝斬はそんなことも考えられないのか。
「桑瀬、東西、うるさいぞ!」
おっと、少々騒ぎすぎたようだ。
「すみませーん」
などと、俺たちは間の抜けた声で返答し、新たな一日が幕を開けた。
ロリに胸を求めるのは間違っている Ria @ria0076
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