第3話 俺、聖女!!
この世界、クレスティアは今、けっこうなピンチらしい。
そうなったときには世界に召喚の巫女が現れ、異世界から『救世者』を召喚し、聖女として迎えることになっているのだそうだ。
で、俺が聖女。
男だけど、聖女。
去年ちょっと筋トレにハマってそこそこムキっとしているけど、聖女。
なんならすね毛生えてるけど、聖女。
……まじで?
「あの、本当に大丈夫っすかね。俺、聖女なんすか?」
「はい、リョウタ様!」
「俺、今まで責任ある立場とかバイトリーダーくらいしかやったことないですけど」
「心配されないでください、私が召喚の巫女として間違いなくお呼びしたのがあなた様ですので!」
召喚の巫女・エメラさんがこくこくうなずいて、俺の手を両手でぎゅっと握った。柔らかい手だ。
緑色の髪をポニテにして、鈴や花で美しく飾られている。
現実世界にはありえない髪色だが、めちゃくちゃ似合っている。
うるんだ瞳で、俺のことを見上げている。
じっと見つめられると……む、胸がくるしい……!
「私は幼い頃から、天災と飢餓に苦しむこの世界を救うため……今日のこの儀式のためだけに修行を続けて参りました……」
「あ、あの……」
「どうぞ私たちをお救いください。聖女様!」
エメラの潤んだ瞳が、俺を見上げる。
柔らかい手だが、体を見るとひどく痩せている。
きっと、あまり旨いものは食べられてないんだろう。飢餓とか言ってたし。
この子は……この人たちは、きっと困っていて、藁をも掴む思いで俺を召喚したに違いない。
「ま、まかせてください!」
つい、そんな言葉が口を突く。
「中堂リョウタ、31才! ……俺、聖女です!!」
俺の言葉に、神殿が「わぁ!」っと揺れる。
可愛いエメラのためなら、俺ちょっと頑張ってみてもいいかもね!
それにさっきから神殿の中に、絶対断れない雰囲気があるし!
っていうか、本当に困ってそうだから、知らんぷりはできないし!
俺、そういう空気には敏感なのです。
あこがれの異世界召喚。
俺を頼っている美少女。
よくわからないけど、なんかチートつき召喚っぽい雰囲気。
いいでしょう、わかりました。
たぶん、どうにかなるよね。いや、するよ。
今日から俺、聖女です!!(やけくそ)
白魔法適正9999のおっさん、異世界で聖女になる~俺が聖女になるんだよ!勘違いから始まる楽しい救世録~ 蛙田アメコ @Shosetu_kakuyo
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