第41話 おまけ 高3 7月
夏休みに入って1週間、俺は昨日までの毎日、
朝から夕方まで悠里と一緒に勉強をしていた。
イチャイチャはしていないよ。いや、マジで。
我が家はお金があんまりないからね。
浪人は問題外だし、せめて近くの私大に行かないといけないから必死だよ。
そして、今日は気晴らしの日。
朝からレジャープールへ行くのだ!
悠里、雄太郎とユイカ、オープンエロ誠人とエロ女神純の6人で。
車で1時間かかるのだが、雄太郎の父親が乗せて行ってくれるのだ。
その車は大きなワンボックスカーで、
俺と悠里は3列目に座るように指示された。
俺は左窓側、悠里は真ん中、ユイカが右窓側だ。
座るとすぐにユイカが俺に何かを差し出した。
「何これ?」
「耳栓。しばらくガールズトークするから、車窓でも見ておいて。」
「ええっ!」
「じゃあ、よろしく~。」
ユイカが圧の強い笑みを浮かべながら手を振っていた。
「ごめんね。」
悠里が苦笑いしながら謝ってくれたので、
しょうがなく耳栓を付けて景色を眺めたよ。
しばらくすると、太ももをトントンされた。
悠里はユイカと何やら小声で話していたが、その左手が催促していた。
俺は嬉しくなって、向こうを向いたままの悠里の手を握ると、
悠里はきゅっきゅっと軽く力をこめてくれた。
また景色を眺めたけど、さっきと違ってご機嫌になったよ。
★★★★★★★★★★★★
30分ほど経っただろうか、今度は右肩に合図があった。
俺の右手は悠里と手を繋いだままだったので、
申し訳なさそうな笑顔を浮かべた悠里が耳栓を取ってくれた。
「ごめんね。もう終わったから。」
「夏休みに入って初めて会ったんだろ?当然だよ。」
「ありがとう。はい、あ~ん。」
すぐに悠里がポッキーを差し出してきた。
「いただきます。」
俺はリスのように少しづつかじっていき、
悠里の人差し指にほんの少し唇を触れさせた。
しかし、悠里は動じず、取り出したポッキーを自分で食べると、
さりげなく自分の指をチラリとなめて、
さらに俺にもう1本のポッキーを差し出してきた。
悪戯っぽい笑顔がすっごく可愛いかったけど、俺も動ぜず食べてやったよ。
★★★★★★★★★★★★
レジャープールに着いたが、これから雄太郎の父親は一人で田舎をめぐって、
B級グルメの食べ歩きをするらしい。
「じゃあ、17時に迎えにくるからな。
はしゃぎすぎて、ケガしないようにな。」
親父さんがにこやかにそういうと、誠人がビシッと姿勢を正して大声を出した。
「輸送隊長殿に~、敬礼!」
その掛け声に合わせて、親父さんに向かって俺たちはビシッと敬礼したよ。
当然、男3人だけで、女子3人はしら~っとしていたけど。
★★★★★★★★★★★★
男3人が早々に水着に着かえると、誠人は簡易テントを張りに行って、
俺と雄太郎は大きな浮き輪を6個も膨らませていた。
「お待たせ~!」
悠里とユイカが現れた!
悠里はいつもは下ろしている長い髪をポニーテールにしていて、
新鮮なカンジだった。
が!
無念!
そのスラリとした体は、最初からラッシュガードで隠されていた!
まあ、ラッシュガードの下は、黒のワンピースで可愛いおへそが見えているんだけど、それを見るのは俺一人しか駄目だから、それはそれでしょうがないけどな。
そして、ユイカもラッシュガードを着ていたのだが、
俺は全く興味がなかった。
お分かりと思うが、高1の時と比べ、悠里はかなり大きくなったのだが、
ユイカは残念なままだったからだ。
何かとは言わないが。
「おい、金吾。失礼なこと考えていないか?」
「キノセイデスヨ!」
テントが無事に張れた誠人がやって来た。
「あれっ、純はまだなのか?」
タイミングよく、反対方向から純の声が聞こえた。
「お~い、お待たせ~。」
純は期待どおり、エロい真っ赤なビキニ姿だったのだが、
走っているので、バインバインと大きく揺れていた。
何かとは言わないが。
雄太郎と二人、視線が釘付けになっていると、隣から殺意の視線を感じた。
ヤバい!
純が大勢の視線を浴びているのを見て、
慌てて誠人が駆け寄り、純の手からラッシュガードをひったくって、
かいがいしくラッシュガードを着せていた。
エロく、色々と触りながら!
そして、誠人は最後に純のお尻を撫でた!
マジか!こんな人前で!
「まこっちゃん、えっち~♡」
マジか!
純のヤツ、語尾にハートマークがついてるじゃね~か!
「金吾~!」
「ゆうたろ~!」
「「ぎゃ~!」」
つい、羨ましそうに見てしまった俺と雄太郎のほっぺが
凄い力でつねられたから、そこを支点に体が一回転するかと思ったよ。
6人揃って、浮き輪の準備も出来たので、テントに女子の荷物を置きにいった。
「さあ、行こうか!」
そして、女子が俺たちに声を掛けたが、男3人はワザともたもたしていた。
ピーンと来た純が尋ねてくれた。
「まこっちゃん、日焼け止め、塗った?」
「「「塗ってない!」」」
訊かれていない俺と雄太郎も食い気味に答えると、
女子3人はやれやれと首を振ったけど、すぐに笑顔を浮かべてくれた。
「「「じゃあ、日焼け止め取ってくれる?」」」
俺は悠里に日焼け止めを渡すと、目を閉じて顔を突き出した。
「もう!子どもみたいなんだから!」
そう言いながら、丁寧に日焼け止めを塗ってくれた。
くすぐったかったけど、すっごく嬉しかったよ。
終わった後、周りの男どもの視線が痛かったけどな!
ぬはははは!
★★★★★★★★★★★
それから6人そろって、4人乗りの浮き輪でスライダーを滑ったり、
長いスライダーでレースしたり、大きな浮き輪に座って急な岩場を滑って楽しんだよ。
恋人どおしの触れ合いとかはあんまりなかったけどな。
太陽が真上まで上ったので、テントに戻って、お昼ご飯を食べることにした。
「みんなの口に合うといいけど・・・」
悠里が6人分のお弁当を準備してくれたんだ。
「「「「やった!ありがとう!」」」」
みんなのお礼の言葉が終わると俺は弁当箱の蓋を開いた。
「じゃ~ん!どうだ、この綺麗な宝石箱は~!」
「金吾が自慢するんじゃない!」
ユイカにビシッと突っ込まれた。
「「「「「いただきま~す。うん、美味しい!」」」」
その言葉がすっごく嬉しかった。
「だろっ?だろっ?」
「金吾は黙れ!」
また、ユイカにビシッと突っ込まれた。
「ほら、ほら、このスパイシーチキン、最高なんだよ!」
まったく懲りずに、スパイシーチキンを勧めると
「悠里が作ったんだから、美味しいのは分かっている。
金吾は落ち着いて、黙って食べろ!」
またまた、ユイカに叱られてしまった。
「・・・だって、一の信者たる俺が布教しなくてどうする!」
「金吾、いつも美味しいっていってくれてありがとう。
はい、玉子焼きだよ、あ~ん。」
「あ~ん。うん、今日も美味しいね。」
拗ねてしまった俺を見かねて、
悠里が玉子焼きをあ~んしてくれると、たちまちご機嫌になる俺。
「「「「はいはい、ごちそうさまでした。」」」」
★★★★★★★★★★★
人がかなり多くなって、スライダーの類は待ち時間が長くなっていた。
だから、カップルごとに別れることになった。
「悠里、どこに行こうか?」
「流れるプールで、クラゲみたいにプカプカ浮いていたい!」
「いいね、それで行こう!」
悠里と手を繋いで、浮き輪に掴まって、流れるプールを何周も漂ったよ。
話はあんまりしなかったけど、暑い夏、プールの気持ちよさ、
大好きな悠里と一緒で最高に幸せだったよ。
★★★★★★★★★★★
しばらくして、テントに戻ったけど、他の4人はいなかった。
「ちょっと、疲れちゃった。」
「じゃあ、少しお昼寝しようか。」
「うん。」
一応、姿は隠されていて、ちゃんと強い日差しを防いでくれて、
さらにそよ風が通っていて、テントの中は居心地がよかった。
悠里と手を繋いで、横になるとすぐに眠ってしまった。
胸に何かが置かれて、目を覚ました。
寝ていたのはほんの10分か、20分くらいかな。
悠里が眠ったまま、俺にくっついていて、その手が俺の胸に置かれていた。
可愛い・・・
こんなにくっつくのは久しぶりだ。
小遣いはあんまりないし、受験生なのでバイトもしていない。
受験生だし、互いの家で勉強している時間が長く、
あんまりイチャイチャしていないんだ。
もう、お姉は悠里を、悠里のお母さんは俺を家族と思っているみたいで、
揶揄ったりはしてこないんだが、
もしセッ・・・しているのがバレたら怖いからな。
二人とも、カンが鋭すぎるから、困ったもんだよ。
そうだ!
眠り姫を起こすためにキスしよう!
悠里を起こさないように、ゆっくりと態勢を整えて、キスした。
「うん?おはよう、きんご~」
いつもより幼いカンジで悠里が目を覚ますと、
微笑んで俺にチュっとしてくれた。
「どう?疲れは取れた?」
「うん。」
「好きだ。」
「うん、好きよ。」
ニッコリ笑った悠里と軽いキスを何度もしていたら、パッと明るくなった!
「「「「いや~、仲良しですな~、お二人さん!」」」」
雄太郎、ユイカ、誠人に純がニヤニヤしていた。
「「あわわ!」」
★★★★★★★★★★★★
17時になって、3組のカップルが手を繋いで、お迎えの車を待っていた。
「いや~、楽しかったな~」
「うん、うん!」
「ところで、夏休みに、一度くらい、勉強合宿しておく?」
ユイカがにこやかに俺たちを見渡した。
「恒例のロッジの予約は取れてるぜ!」
ユイカと手を繋いでいる雄太郎が肯いて、手回しの良さを見せつけてくれた。
が!
純がニコニコ笑いながら、誠人を見た。
「泊まるならロッジよりも、ラブホの方がいいよね?」
流石、エロ女神、色々と台無しにしてしまった。
だが、「いいね!」って言いたい。
「それ、最高~!」って言いたい。
声を大にして!
だが、空気を読んだ俺は、みんなとともにそわそわしながら黙り込んでいた。
そして、俺と雄太郎は、「責任取れよ!」って誠人を睨んだ。
「ははは!
いや、まあ、ラブホはいつでも行けるし、
俺と純が付き合いだした思い出のロッジに今年も行こうぜ!」
空気を読める男、誠人が必死のフォローをすると、みんな肯いてくれた。
「肝試しの時にまこっちゃんに告白されたよね~。」
ようやく空気を読んだエロ女神も肯いた。
「いつでも行けるんだ・・・」
って悠里がつぶやいたのは内緒だ。
後で、俺だけがイジるけど。
「あとは、晴子を呼ぼうぜ。アイツらも順調なんだろ?」
「カレシもいい奴だぜ。」
「よしっ、決まったな。」
今年の夏は受験勉強で大変そうだが、お楽しみがあるから頑張れそうだ!
「みんな、ありがとう!」
嬉しくって、つい、唐突にお礼を言ってしまった。
「おいおい、なんだよ、急に~。」
みんなはキョトンとした後、代表して雄太郎が答えた。
「いやさ、こんなに楽しいのはみんなのお陰だって思ったんだ。
うん、俺、入学式の日にフラれてよかったよ。
フラれてなかったら、みんなとこんなに仲良くなれなかった。」
みんなは互いに視線を交わしていたが、みんな微笑んでいた。
そして、雄太郎が肩をすくめてから、話し出した。
「おいおい、こちらこそ、ありがとうだぜ。
金吾が独りぼっちじゃなかったら、
お前と校外学習で一緒の班になろうって思わなかったぜ?
それに、ユイカとお前、そして悠里の4人が楽しかったから
こんなに仲良くなって、ユイカの恋人になれたんだからな!」
「だぜ、だぜ。お前ら4人が仲良かったからさ、
ロッジでみんなで泊まろうぜってなったんだし!
お陰で、俺は純と付き合えるようになったし!
な?」
誠人が純に同意を求めると純は大きく肯いた。
「だよね。
だから、金吾が今、楽しいのはほぼほぼ悠里のお陰でしょ!」
「だよね~?」
今度はユイカが雄太郎に同意を求めた。
「そうそう!
ほんで、今日はイチャイチャをたっぷりと見せてくれて、ご馳走様だな!」
ニヤニヤしながら雄太郎がそう言って、俺と悠里を見比べた。
「・・・」
赤面して俯いてしまった俺と悠里に向かって、
ユイカ、誠人、純がニヤニヤしながら声をそろえた。
「「「うんうん、ご馳走様~!」」」
そう辱めを受けていたら、大きなワンボックスカーが近づいてきた。
「みんな、お待たせ。楽しかったかい?」
助手席の窓を開け、雄太郎の親父さんがにこやかに声を掛けてきた。
「はい!」
みんな揃って、笑顔で、大声をあげた。
そして、また誠人がビシッと気を付けをして、張りのある声を出した。
「わざわざ~、迎えに~、来てくれた~、輸送隊長殿に~、敬礼!」
今度は6人全員でビシッと敬礼したから、
みんなと、親父さんも一緒に大笑いしたよ。
★★★★★★★★★★★
たくさんの応援、どうもありがとうございました。
高校の入学式の日、幼なじみの恋人から、運命の人と出会ったから別れてくれって フラれた俺たちの話。 南北足利 @nanbokuashi
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