第40話 高2 ・ 12月②

最終回です。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


2学期の期末試験の結果発表が終わって、放課後、

悠里にハーゲンを奢ってもらう予定だ。


また、勝ったのだ!

ぬはははは!


本当に帰る直前、悠里からのラインに気が付いた。

『16:05に体育館裏に来て。お願いね。』


学校で告白なの?

???なぜ5分なの?


少し時間をつぶして、16:00に靴を履き替えて、3分後、体育館裏をそーっと覗いた。


「悠里、なんで俺じゃ駄目なんだ!」

生徒会長梅谷紘一が悠里に縋りつかんばかりだった!


ああ、そういうことね!


「悠里、お待たせ~。」

のんびりした声を出して、二人の前に姿を現すと、

悠里はホッとした一方、梅谷はまなじりを吊り上げ、俺に嚙みついてきた。

「なんでここに来た!」


「うん?悠里に呼ばれたからだけど。」

悠里から梅谷に何度も誘われて困っていると聞いていた。


「俺が話しているんだ。ちょっと向こうへ行ってくれ。」

梅谷はシッシっと手を振って追い払おうとしてきた。


「いや、俺はこの時間にここに来てって悠里に呼ばれたんだ。

だから、ちょっとだけ、時間くれ。ちょっとだけ。」

強引に梅谷を押しのけた。


俺が連れ去ってくれると思っていた悠里は少し驚いて、目を見開いていた。

うわあ、緊張するわ。


一つ、咳払いして、笑みを浮かべて、はっきりと告げた。

「悠里、好きだ。大好きだ。俺と付き合ってくれ。」

悠里の目がもっともっと大きく開いた。


「なんだよ、お前!」

梅谷が俺の手を掴んだので、払いのけた。

「邪魔。俺は悠里の返事を待っているんだ。」



「ダメだよ。」

眉をひそめた悠里が顔をフルフルと左右に振った。


「えっ!」

愕然とした!

まさか、フラれるとは!


マジか!


視界の端では梅谷が歓喜の表情を浮かべていた。

よし、梅谷をぶん殴って、家でたっぷりと泣こう!


顔を真っ赤にした悠里が口をとがらせながら言葉をつづけた。

「なんで、梅谷君がいる所でするの?

もっとムードのいいところで告白してよ!」


「へ?それって・・・」

「これまでだって、いい雰囲気になったこと何度もあったでしょう。」

混乱する俺を見て、悠里は微笑んで肯いた。


「ありがとう。」

失望から救い上げられた俺は悠里を軽く抱き寄せ、囁いた。


「何度でも好きだって言うよ。

ムードの良い所でも、全然、ない所でも。何度でも!」

悠里も軽く抱きしめてくれた!


「うん。でも、ムードのいい所でやり直しね。」

「うん。」


やった!最高!最高だ!


まさに勝利の雄たけびをあげようとしたその瞬間、


「「おめでとうございま~す!」」

男女のハイテンションの声が近づいてきた!


慌てて悠里と離れたのだが、

もう、すんごい笑っている雄太郎とユイカが、二人とも、

スマホを俺たちに向けていた。


「「バッチリ、撮れてますよ!」」

「い、い、い、いつから?」

「金吾がどこにいくのかな~ってこっそりとね。」

ユイカが言葉を切ると、雄太郎が肯いて言葉を繋げた。


「おう、美味しいドラマの予感がしたからな

3人が集まる直前から録画しているぜ。」

「「「消して~!」」」

俺と悠里だけでなく、梅谷紘一も心を一つに、ハモッて叫んでいたよ。


★★★★★★★★★★★★★


クリスマス・イブ。


俺は悠里の家でご馳走になっていた。

悠里が頑張って豪華ディナーを準備してくれたのだ!


「美味い、美味すぎるよ~。」

「金吾って、ほんとに大げさなんだから・・・」

褒めすぎてちょっと嘘っぽく感じているみたいだった。


でもさ、俺もお姉もだけど、簡単なものか、混ぜて温めたらいいものばかりなんですもの。

いやさ、それも美味しいんですよ。


でもね~、ただでさえ美味しい料理なのに、

大好きな彼女が自分のために作ってくれた料理なんだぜ~、

さ・い・こ・う~!


ちなみに、悠里のお母さんはパートの給料が安いのと、

お酒が飲みたくて、飲みたくて我慢できず、

11月ごろにスナック店員に戻ってしまい、今日はお店のクリスマス・パーティです。


まあ、しょうがないよね。


俺たちはかなり早く、18時に夕食を食べ終わり、

防寒対策をバッチリとって、出発だ。


玄関を出た瞬間に、そっと手を出すと、そっと繋いでくれた。

嬉しい。

幸せだ。


電車とバス、ケーブルカーを乗り継いで、六甲山を登って行った。


ずっと手を繋いだまま、展望台に上ると、頭上には満天の星がまたたき、

眼下を眺めれば、神戸港の100万ドルの夜景が広がっていた。


「綺麗だね。」

「うん。もう、ビックリするぐらい綺麗だ。」

多幸感に満たされながら、しばらく言葉もなく眺めていた。


周りにたくさんの夜景見物の人がいたので、

悠里の耳元に口を寄せ、囁いた。

「悠里、大好きだ。」


悠里が顔を真っ赤にして俯いてしまったので、また景色に目を向けた。

すると、悠里が耳元に口を寄せてきた。

「金吾、大好き。」

今度は俺が俯かされてしまった。


告白の時はムードが全くなかった。

ていうか、梅谷はいるし、雄太郎たちには録画すらされていたからな。

その後、二人っきりになったとき、叱られた。甘かったけど。

もう、叱られているのに、嬉しかったね。


そして、アレはムードのあるところでと厳命されていたのだ。

「ねえ。」

「うん。」


悠里を見つめると、悠里も潤んだ瞳で俺を見つめていた。

「大好きだ。」

囁くと悠里は小さく肯いてくれた。


そして、勇気を奮い起こし、優しく抱きしめてキスした。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


どうもありがとうございました。

たくさんの★、応援コメントいただき、感謝です。

まさか、週間9位までいくとは思いませんでした。

本当にありがとうございました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る