あの夏で待ってる。

うみ

第1話 今日はやけに暑いな…

 今日は七月一日、本格的な夏が始まった。

蝉時雨は夏の始まりを感じさせ、窓を開けると眩しいほどの光が目を覆い尽くす。僕は夏が嫌いだ。

 いつものように制服に着替え、喉の乾きを潤すために水を飲む。いつにも増して喉が渇いてしまうのは夏のせいだろう。

 今日も今日とて学校へ足を運ばせる。制服をだらしなくも学生らしく着こなし、散髪は嫌いなので髪をヘアゴムで結っていくのが最近のマイブームだ。

 徒歩25分の道のりを歩いていくと、僕の前に1人の女子学生が歩いている。僕の唯一の女友達、進藤神楽だ。唯一の女友達ということもあって僕は神楽のことが高校一年生の頃から気になっている、ただ、そんな気持ちも言えることなくこうしてだらだら過ごし、高校三年生になってしまった。

 僕は後ろから「おはよう」と声をかける。

 季節は夏ということもあって神楽の制服は長袖から半袖へと衣替えをしていた、短い袖から伸びている細い腕には汗が滴っていて、その華奢な身体な色気すらも感じてしまう。

もし神楽と付き合えていたら…、そんな妄想ばかり浮かんできてしまう自分が情けない。

 邪な考えを忘れ、神楽と話していたら僕らの通っている学校が段々と見えてきた。2人で校門へと向かい、足を踏み入れようとした時、神楽に呼び止められた。どうやら背中の汗が凄いらしい、夏特有の悩みだ。

「そんなの気にしなくていいよ、夏だから。」

僕は恥ずかしさのあまり強がってしまう、そんな僕を無視するかのように神楽は自分の持っていたハンカチで僕の額から溢れている汗を拭いてくれた。顔が赤くなっているのが自分でも分かる、僕はその場から去るように校舎へと走って向かう。先程吹いてもらった汗がもう出てきている。

「今日はやけに暑いな…」

そんなことを考える夏の始まりだった。

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あの夏で待ってる。 うみ @umi_uni

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