蛇足
そしてその数日後、僕から彼女に別れを切り出すことになった。
納得できるはずもないだろうに、彼女は理由を問い詰めることもせず、直接会って説得しようともしなかった。
「そんな気がしてた。」と僕に告げて、彼女はこの申し出を受け入れた。
それからは合鍵の返送や家に置いていた私物の処分など、事務的なやり取りが速やかに遂行され、それを最後に彼女と連絡を取り合うことは無くなった。
それから半年ほど経った頃。僕がまだ彼女への好意がなくなった理由に気付けていない頃。
晩酌の最中にふと彼女は今どうしているのだろうと過ることがあった。
未練や下心はなく長年会っていない小学校の同級生に思うような好奇心のようなものである。
本来であれば思い留まるところだが、酒の力も手伝って、「元気?」というメッセージが溢れてしまった。
メッセージが送信された直後、未練や下心があるようにしか思えないトーク画面を見て、即座に後悔をした。
自分の中で無かったことにして、そのまま晩酌を続けていると、通知が鳴った。
スマホを表に返すと元彼女からだった。
ロックを解除し、楽しみ半分怖さ半分で再びトーク画面を開き、メッセージを確認した。
メッセージには、「元気であること」、「今更連絡されても困るということ」、「今どうしているかは僕にはもう関係ないということ」が書かれていた。
そのメッセージを見て、僕はメッセージを送ったのとは違う理由で少しだけ後悔をした。
もしかするとあの時の決断は間違いだったのではないかと。
そして今、好意がなくなった理由を理解して気付く。
その元彼女からのメッセージに、僕は初めて会った時の自由な彼女を垣間見たのだと。
それと同時にあの時の決断は間違いだったのでは?という少しの後悔は無くなった。
あの時の決断が無ければ、垣間見えた自由な彼女は今も尚、存在し得なかったのだから。
好きだったはずの彼女への好意が急激になくなってしまった理由を半年以上かけて論理分解した話 PUCCHI @PUCCHIIIII
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