第2話

 当てのない僕の旅が続いていくらくらい経っただろうか。

 探せど探せど誰も見つからず、体とは違い、心はいつでも万全な状態にはなれないので、鬱屈とした気持ちが溜まってきた。

 その度に、石を積んだ。

賽の河原の石積みだ。

 ただ一人自分だけが生き残ってしまったことを、誰かに咎めて欲しかった。褒めて欲しかった。

 いい感じに積み重なってきたら、蹴って壊す。

 狂ったように。

本当に狂っていたのだろうが、ひたすらに繰り返す。飽きたらまた少し歩き、石を積む。

 努力が崩れていく感じが、心地よく、悔しい。

 睡魔も襲わなくなってきたので、昼と夜の区別なんてなかった。

 こんな僕を見つめてくれるのは、月と、星ときっと僕だけだ。

 

 もうほぼ生存者がいないと理解しながらも、希望を捨てきれずにいると、視界の彼方に、ビルのような影が見えた。


 気がついたら、体は動き、走り出していた。


 多分、もう誰も生きてはいないのだろう。

 そんな実感もあるが、それでも、走ってしまう。

 

 息も絶え絶えに、体で息をし、息が詰まろうと走る。


 次第に近づいていく影に、こころが弾む。

 

 ようやくついた。


 ビルは大きく、聳え立っていた。


 さらに近づき、見る。

 

 よくよく見れば、人影があった。

 

 しかも、動いている。

 見間違いだろうか?疲れていて視野でもぶれたか?


 そう思いつつ、人影の元へ、歩く。


 

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月降夜 昏昏 @IkiikI

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