月降夜
昏昏
第1話
とある日の夜、星が降った。
圧倒的な自然の脅威の前には、どんな技術の叡智も、愛も何もかもが無意味であった。
そんな中生き残ったのは、生き残ってしまったのはなぜなのか、神のいたずらか、あるいは神の寵愛か。
闇が周囲が包み、瓦礫と砂塵、そして血が散乱する中思案する。
あたりはどこかの家から出た炎か知らないが、火の手が周り、沈静化するまでここから動けそうにもない。
ごう、とどこからか音が聞こえる。
ふと上を見上げれば、砂埃の中から満点の星空が見えた。
あの絶景を構成する一つがこの星に落ちたと思うと、残酷ながらどこか美しかった。
10日、あるいは数十日か。
わかったことがいくつかある。
まず、隕石はこの国に落ちてはいないということ。
生き残った人間とは接触していないのでほとんどの人類が死に絶えたであろうこと。
そして最後に、おそらく僕は不死の人間だったようだ。
あたりに誰もいない時に、火に飛び込んでみた。
熱く、痛かったが死ねなかった。
次第に雨が降り、火は沈静化した。
傷口にじゅう、と染みたが次第に傷は消えた。
疑問に思いつつも、孤独に耐えきれず、鋭い瓦礫で首筋を掻き切る。
ぶしゅうと、首筋から、体の中から嫌な音がした。
大量の血を見て、僕は恥ずかしながら失神した。
致死量の血が出たはずなのに、なんなら足元には僕の血だと思えるものが湖を形成しているのに生きている。
傷口を触ろうとしても皮膚が続くだけでわずかな凹みもなかった。
傷の治りも早いみたいだ。
ここまですれば流石の僕も自分が不死なのでは?と思った。
されど、不死になった原因もわからないし、自慢する相手も、誰もいない。
おそらく先の隕石で死ななかったのも不死身だったからだろう。
もし、隕石に不死身になる原因があるならば、他にもたくさん同じような境遇の人がいるかもしれない。
今後の指針は、僕以外の生存者をさがすことになりそうだ。
翌朝から僕の当てもない旅が始まった。
この十日間で、喉の渇きも腹の空きもないことはわかっているので、後は進むだけだ。
一歩目を踏み出す。
それは、絶望に満ちた一歩なんかじゃない。
希望に満ちた一歩のはずだ。
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