まるで美術館で油絵を鑑賞するように、ひとつひとつの場面が、とても印象的でした! 味のある映画のように、ドラマティックです。
この作品には、すぐれた「味わい深さ」があります。ひとつひとつの言葉の使い方の、センスの良さ! スピーディーに読み飛ばして楽しむ作品ではなく、じっくりと鑑賞したい作品だと思いました。
天使と人間の恋……なんと高雅なロマンス!
そして「雨の天使」という設定がいい! その設定だけでも素晴らしいですが、さらに雨の情緒が丹念に描かれていて、ぐっと惹きこまれました。
独特の空気感・情緒感があって、実際に異国を旅しているような気分に浸れます。CSルイス、トールキン、ル・グウィンなどの文学的ファンタジーの血を引いている感があって、とても素敵でした。
主人公の、雨の天使・レインがまとう、雨の情緒感。子供たち、老婆、村のお祭りなど、丁寧に、繊細に描写される世界観。作者様の、作品に対する真摯な姿勢が、作品の純粋さとなって表れているように感じました。
とても純粋で、美しい作品です!!!
重厚でシリアスな設定や描写など一般的にはWEB小説らしくないし、あまりウケないのかもしれないが、私はこういう作品が評価されてほしいとも思う。
とある老婆が語る形式で綴られていくので、十数万文字読んだ末、最後にまた老婆の視点に戻った時のカタルシスがすごい。
特に、初めは何が何やら分からなかった老婆やら、旅人やら村人やらの要素が、作中で語られる物語を経ることで「これってもしかして?」という伏線回収にも似た心地よさがあった。
作中、天使の回想で登場するサブキャラクターたちの話も本編と同じくらい魅力的で、この人たちの物語単体で読んでみたいと思った。
ラノベ的な分かりやすいキャラ付けこそ少ないかもしれないが、それよりも深みのある“生き様”を感じるキャラクター造形に感心してしまった。
本作は完全三人称(いわゆる神視点)で描かれる珍しいタイプの小説なので、初めは少し読みにくさを感じたが、次第にそれが、第三者の語り部の存在を感じさせてくれて、本作の神話っぽさや童話っぽさを引き出していると感じるようになった。
一風変わった構成でありつつ、ど真ん中の人間模様や恋愛模様を描いてくれる。それでいて、読み応えのあるシリアスな作風が好きな方におすすめの一作です。