第35話

「死んだの?」


ヴィオレ嬢がこの棒で白蛇をつついているが微動だにしない。


「そこそこ過激な怪談にしましたが、さすがにショック死は…」


私がそこまで言ったところで白蛇が目を覚まし、逃げ出そうとした。


「おお、生きてたの!」


ヴィオレ嬢は驚きながらも予測していたように白蛇の首をつかみ持ち上げる。


『離せっ、離してくれ!逃げなきゃっ、ころ、殺される!僕はまだ死にたくない!!』


よほど怖かったのでしょう。可哀想なほど怯えてしまっていますね!


「嬉しそうな気配が隠せてないの。」


おっと、少し顔が緩んでしまいましたか


「安心するの、あんなことは起きないの。ただの幻覚なの」


『げ、幻覚?なら、寝てもあんな夢を見ないのか?!つ、次は無いんだよな!?』


ヴィオレ嬢からの非難の視線を感じますねぇ。


「ええ、眠ったとしてもあの夢を見ることはありませんよ。そもそもあれは私の物語の中の行動で実際に見たわけでも眠っていたわけでもありませんから。」


まあ、トラウマとして夢に出てしまうことはあるかもしれませんがねー


「それより、白蛇さんに聞きたいことがあるのです。」


「ちょっと待つの。この子はシロなの」


シロ?名前でしょうか


『勝手に名前なんかつけてるんじゃねえ!』


当然、白蛇は反抗しますが


「じゃあ何か名前あるの?」


『いや、、ねえけどよ...』


ヴィオレ嬢の圧に負けて受け入れたようですね


「じゃあ決まりなの。お前はシロなの」


珍しく子供らしい強引さでしたね。


「さて、では改めてシロ。白影について知っていることを話してください」


倒すかどうかはさておき、どのような姿形をして、どんな能力を持っているか知っておきたいですね。


『はあ?白影ってなんだよ?知らねーな』


「真面目に答えるの。昨日2人で協力して冒険者からイノシシを持ってったって聞いたの」


『イノシシ?ああ、いや、思い出した。いつもみたいに人間共を追い返そうとしてた時にいつの間にかイノシシの肉が無くなってたんだよな。』


「つまり、あなたは何も見ていないと…?」


確か蛇は熱で物を見ていると言いますが、それでも見ることができないとなるとそもそも実体がないのかもしれませんね。

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人でなし怪談師の旅路~怪談の人気が無さすぎるので魔王に会いに行こうと思います。~ タイムクライムライフ @timeclime

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