第34話

『次は、活け造り~活け造り~』


はっと目が覚める。あの人間の男が何かをつぶやいてからの覚えがない。我、いや僕はいつも通りねぐらに戻って眠っていたらしい。記憶はないが逃げきれたということだろう。流石僕だ。


僕は僕としてごく最近生まれた。この僕らの森に大勢の鉄を纏った同じ姿の人間たちが攻め込み、獣たちを狩っていくようになった。だから僕はこの森を守らなければいけないと、そういう使命なのだと思った。そう、思ったのだ。獣にありえざる思考、感情を手に入れた。


しかし強くはなれなかった。だから知恵を絞った。あの大勢の鎧たちには勝てない。だからほかのもっと数が少なくて弱そうなやつらを相手にしようと思った。


尖った石や木の根、人間が作った落とし穴なんかのトラップ。子終えで誘導してやれば簡単だった。惜しむらくは僕に彼らを殺す力がなく、とどめを察せなかったことだろう。しかし、痛い目に合わせたのだからもう来ていないはずだ。


今日も奴らを罠にはめてやろうと寝床の穴倉から出ると、夥しい数の蛇が死んでいた。いや、その表現は正しくない。彼らはは今も生きて死んでいる。dyingだ。今もサルの人形が小さなナイフで同胞を切り付けている。しかし、簡単には事切れず皆もだえ苦しんでいる。


僕は逃げ出した。いつ自分にその刃が向くかわからなかったから。寝床には戻らず新しく穴を掘っておびえながら眠った。


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『次は抉り出し~抉り出し~』


僕が目を覚ますとそこはいつもの穴倉だった。いや、目を覚ましているのではたった今眠ったはずなのだ。いつも道理に人間に攻撃し、ねぐらに戻り寝たはずなのだ。つまりこれは夢、明晰夢ということだろう。初めての現象にテンションが上がる


ねぐらの外に出ると蛇たちがまたも無残に殺されている。胴の中心を切られ、内臓を抉り出されている。声にならない悲鳴を上げながら皆絶命していく。忙しなく血と肉が噴き出るなか一匹の人形がゆっくりとゆっくりと近づいてくる。


夢なんだろ?!覚めてくれよ!早く起きなきゃっ!早くっ!


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《次はひき肉~ひき肉~》


まただ。またこの夢だ。いつ眠ってもこの夢だ。奴らは少しずつ近づいている。それでも逃げ出せば追いかけてくる。追いかけてくる人数が日に日に増えている。それでも逃げるしかできない。


いや、そうだ!ここからでなければいいんだ!もう惨状を見なくて済むし、もう逃げなくて済む!そうだ、そうしよう!


息を潜めて身じろぎもしない。カシャカシャと人形が動き回る音、肉と骨がぐちゃぐちゃにつぶされる音、人には聞こえない同胞の悲鳴が聞こえる。いやっ!!聞こえない何も聞こえないっ!何もないんだ、夢なんだから、そうだ、そのはずだ!!


音が止んだ。奴らはもういなくなっただろうか。同胞たちは…?


恐る恐るねぐらから顔を出そうとする。


サルたちがこちらを見ていた。




《次は終点~終点~》


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