1-3
後日、正式に私が婚約者だと決まり、国に公表された。王太子と公爵令嬢の婚約発表というだけあって、しばらくは話題になった。
王太子も公爵令嬢も身分が高いため、それこそ生まれた時から婚約していてもおかしくなかったと考えると遅い方だろう。
それにしても婚約披露パーティーは大変だった。朝から風呂に入れられ、ドレスを着せられ、化粧をされ。パーティー中はずっとハイヒールを履いて常に笑顔。
社交は得意だがあれは疲れた。もう二度とやりたくない。まあ次があるとしたら結婚式くらいだろう。
普段は化粧をしない私が化粧をすると自分で言うのも何だが結構整っていた。
そもそも、悪役令嬢エリメラ·アルバートは素材が良いので化粧など必要ないが。
そして婚約発表から少したち、今日はジュリアス様が私とお茶をしに来ている。なんだかとても嬉しそうな笑顔でずっとこちらを見ている。
「あの、ジュリアス様?どうかなさいまして?」
「いや、百面相しているエリメラは可愛いなと思ってね」
「はあ。ありがとうございます?」
褒めているのか何なのかよく分からないが取り敢えずお礼を言っておくと笑われた。失礼な。
「ジュリアス様?」
「ふふっ。ごめんごめん。そんなに固くならないでよ」
「そんなこと言われましても…」
「そうだな…あっ、今日はエリメラにプレゼントがあるんだった。すつかり忘れていたよ」
わざとらしくそう言うジュリアス様。絶対忘れていなかったでしょうに。
「私からエリメラにプレゼントを渡すのは初めてだね。どうぞ」
「ありがとうございます。開けてみても宜しいですか?」
「もちろん」
一体何が入っているのだろうと思いながら開けてみると、中に入っていたのはなんとこの国の歴史書だった。
「これは初代国王の時代の歴史書ですね!頂いても宜しいのですか?」
「もちろんだよ」
「ありがとうございます!それにしても何故歴史書を?」
「エリメラは歴史が好きだと聞いてね。その歴史書は教科書には載っていないような細かい所まで書かれたシリーズなんだよ」
「読むのが楽しみです!」
そう、私は歴史が大好きだった。前世でも歴史の授業は好きだったが、大好きなゲームに出てくる国の歴史となると凄く興味がある。
しかもこれは中々手に入らない稀少なシリーズのものだった。まさかこれを貰えるとは思っていなかったためとても嬉しい。
「喜んで貰えたようで良かったよ。今度王宮図書館の禁書区域に入って見る?」
「良いのですか!?」
「うん、許可を取っておくよ」
「ありがとうございます!」
殿下とお会いして初めての満面の笑みを浮かべるとジュリアス様が笑顔で固まる。
「ジュリアス様?」
「あ、いや…今日はこれで失礼するよ!ではまた!」
「えっ、あっ、はい!」
走っていったジュリアス様の顔は真っ赤だった気がしたが、きっと気のせいだろう。
ジュリアス様が作り笑い以外を浮かべているのは見たことがない。いや、私の前では自然な笑顔の時もあるが。
とにかく、思わぬプレゼントを貰った私は大切に本を抱きしめ、部屋に戻っていったのだった。
気が付いたら乙女ゲームの悪役令嬢に転生してました!?~死亡ルートをいつの間にか回避して隠しルートに入っていたようです~ 山咲莉亜 @Ria-Yamasaki
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