第4話 台無し

 隆の家に教授が再調査にきた。

 権蔵爺さんは通りかかった教授を見て、すかさず声をかけた。

「先生様! うちにもありましたで」

 教授は帰りに、権蔵爺さん家に寄った。


 権蔵爺さんは木箱を並べた。教授に手を合わせたいくらいだった。

「じゃあ。ものを見せてください」

 教授の目は木箱を素通りしていた。


「まあ、たとえネズミの小便でシミが付いていても、素人の方が、タワシなんかでごしごし洗ったらダメですよ」

 貴重な文化財が台無しだった。


「それより、古銭はないですか。私は個人的に藩札はんさつが好きで、コレクションにしてるのですよ。徳島藩の藩札なら、高値で買いますよ」

 権蔵爺さんは、隆にやった古銭の中に藩札があった、ような気もした。権蔵夫婦は力なく座り込んだ。


 勲叔父さんが軽快なバイク音を響かせて、洋一の家に姿を見せた。

「お前ら、大金持ちや」

 隆と洋一、修司は万歳をした。

「だけど、子供が大金を持ったらいかん。親に貯金しておいてもらいな」


 子供たちの万歳の声は、権蔵爺さんにも聞こえた。忌々いまいましかった。しかし、ここは下手したてに出るしかなかった。


 権蔵爺さんが隆を小声で呼び止めた。

「この間の古いゼニ、あれどうした? もういっぺんだけみせてくれんかなあ」

 やはり惜しくなったのだ。村は、権蔵爺さんが金儲けに失敗した話で、持ちきりだった。


「汚かったので酢にけて洗うたら、ピッカピカになってな。万歳して喜んだけんど、勲叔父さんが調べてくれたら、値打ちはゼロになってしもうとった」

 権蔵爺さんの目に残っていた、かすかな輝きが消えた。


「それくらいのウソなら許されるんと違うかなあ」

 洋一、修司は気にしていなかったが、隆はちょっぴり心が痛んだ。


 隆の家のお宝は再び、野菜入れに戻っていた。父も母も、無欲だった。

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続 村の少年探偵・隆 その3 お宝 山谷麻也 @mk1624

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