第29話 いざ実行
「えーと? 俺達が襲うんですか? 風紀委員会を?」
「うん」
「はぁ〜……」
マジかよと言いたくなったが、ライムは真面目だ。
確かに一理ある意見ではある。
このまま数で押し切られるくらいなら、こっちから襲って短期決戦を仕掛けるのはアリだ。
問題は相手が風紀委員って所なんだけど……流石に本体の勢力は凄まじいだろうし、一筋縄では行かないと思うのだが。
「あ、じゃあさ!! 風紀委員の事が大っ嫌いな生徒を集めて襲わせたら!?」
「確かに、風紀委員に恨みを持った生徒は多いでしょうし……」
「それで人は集まるのかよ? 第一、叶わないから悪口だけで留まる人間が多いだろうし」
人間なんてそんなもんだ。
ムカつく奴がいたとしても本当に手を出すのはごく僅か。
相手の方が上だから。
正当な行為じゃないから。
単純にめんどくさいから。
適当にやらない理由をつけて、やろうともしないのは普通のこと。
あーいうのはお手軽に得られる対価を求めて……
「待てよ?」
リリィのアイデア、もしかしたらいけるんじゃね?
~~~
「うおおおおおおお!! 風紀委員共を皆殺しにしろおおおお!!」
「八つ裂きにして公開処刑だ!!」
「殺しちゃダメだちゃんと捕まえないと!!」
三日後、学園内では風紀委員を捕まえようと暴れる生徒達で埋め尽くされていた。
逃げ回る風紀委員とそれを追いかけ回す生徒達。
完全に立場が逆転したな。
傍から見るとすげぇ面白いや。
「ご、ご主人様の言う通りになりましたね……」
「みんなハンターみたい!! やっばーい!!」
「計画通り、だな」
混乱で包まれた校内を離れた所から観察する俺達。
何故こうなったのか。
それは俺が仕掛けた罠に秘密がある。
『風紀委員を捕まえて体育館に持ってきた者に賞金を差し出す。上位の風紀委員を捕まえた者には更にボーナスを渡そう』
これは二日前に俺が学校中にバラまいたビラの内容だ。
タダで風紀委員とは戦いたくない。
だけど報酬が出ると分かれば?
金と日頃の恨みが重なった結果、生徒達
は欲望のままに暴れ出すようになった。
しかもデバイスを通じて風紀委員を捕まえた者に賞金を渡す動画を拡散したし、信ぴょう性はかなり高い。
マジで最高の作戦だ。
え?
お金はどこから持ってきたかって?
「止めろ止めろォ!! わらわのお金が無くなるじゃろうが!!」
「生徒達には協力しないとダメじゃないっすか、マヤせんせー?」
「ぐぬぬぬ!! お主らなんか罠にかけるんじゃなかったわ!!」
自業自得だマヤ先生。
フリオニール魔術学園の教師と言うのは相当稼いでるらしく、俺とメイに詰め寄られたマヤ先生が賞金を出す事になった。
本人は相当嫌そうだった(当たり前だが)
けど俺に迷惑かけた罰だ。
少しは苦労してもらおうか。
ドカァアアアアアン!!
「なんの騒ぎっすかねぇ……!!」
「おおっと、お漏らし隊長さんじゃん」
「別に漏らしてないっすから!!」
爆発音とともに例の行動隊長、ナンバーが現れた。
時々股を押さえつけたりしてるのは、またライムにやられないか警戒してるからか?
「今度こそ逃がさな……」
「いたぞー!!」
「捕まえろ!!」
「えっ、ちょっ!!」
早速攻撃しようとしてきたのだが、ナンバーの立場はそれなりに偉い。
つまりめっちゃ狙われやすいってこと。
ナンバーを見つけた生徒達は他の風紀委員なんか見捨てて一斉に襲いかかった。
流石の実力者も数の前では抑えられてしまう。
「じゃあなー!!」
「アデュー!!」
というわけでナンバーの足止めは確認したし、俺達は風紀委員室へ向かうとしよう。
まだまだ元気なうちがチャンスだからな。
とある辺境貴族の三男に転生。ランクマッチが存在する魔術学園で最下層に追いやられたが、何故か付いてきたDLC特典で成り上がろうと思います 早乙女らいか @kasachi-raien
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