第8話 元親と茂辰
「長宗我部国親は死んだっ!武家は若き大将ほど不安定じゃっ!今期こそ今までの勢力を取り戻すときぞ。長宗我部陣になだれ込め!」
茂辰は怒号する。
本山勢約二千は長宗我部陣に殺到する。
今まで負け続きであったこともあり、兵卒たちはより躍起になる。
「殿、ご推察通り本山勢が攻めて来ましたぞ。」
「うむ。」
元親は国親の葬式のため喪服から甲冑に着替えたばっかりである。
しかし計画と気力は十分であった。
「今ぞっ!元親を討て、好機はここしかあるまい!」
「本山勢を打ち返せっ!相手は油断しておる、ただの軟弱よっ!」
敵味方入り混じりの接戦である。
すでに元親、茂辰両人は互いの敵の中に入り自ら槍を振るっていた。
「殿っ!深入りはなされるなっ!」
「!?」
気づいた元親は慌てて自陣に引き返す。
「茂辰様っ!ここは我らにお任せを!本陣に戻りなされ。」
「わかった!ここを頼む。」
茂辰は改めて別働隊の指揮をとる。
元親本陣を包むように本山の別働隊が動き出すが気づいた元親は親貞に別働隊の阻止を任せた。
「あの黄金の兜は元親の弟、親貞だ!討ち滅ぼせっ!」
「討てるなら討ってみぃっ!」
本陣では元親が策の実行の準備をしていた。
「殿、親貞殿により別働隊は阻止できております。そろそろ本山勢の背後の城に合図を。」
「承知した。親光、後半刻で実行せぃ。」
「ははっ。」
後半刻……とは言うがその間にもかなりの損失が両軍共に生じている。
「殿、実行いたしますぞ。」
「わかった。」
長宗我部陣の前方で爆発が起こった。
本山勢の後方から混乱が生じる。
裏切りである。
「茂辰様っ!小川正克が裏切り!我らの後方から攻めかかっております。」
「……っ!」
挟撃という最悪の状況下に置かれた本山勢だがこれを打破したのは茂辰である。
「ついて参れっ!これより小川勢を強行突破し居城に戻る。かかれっ!」
「おおっーー!」
「茂辰様をここで討ち取れっ!」
しかし茂辰自ら先陣をきったのもあり小川勢は瞬く間に壊滅。
後方の長宗我部陣は浮き立っていた。
「茂辰は退く。そのついでに居城も奪い取れ!」
「おおっ!」
潮のように退いていく本山勢だが目指すは自身の居城ではなかったらしい。
居城の奥の四万城になだれ込んでいた。
この戦いにて長宗我部軍は一つの本山方の居城を手に入れたがかなりの時間がかかった。
本陣にて元親は悔しがる。
(もうそろそろのところで本山を滅ぼせたものを………。兵の損失ばっかりじゃ……。父上申し訳ござらぬ。)
元親は四万城を囲み準備にとりかかった。
七つ片喰 長宗我部元親 @Radkaw66
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。七つ片喰 長宗我部元親の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます