第7話 軍神

国親は岡豊城の殿中で書状を書いていた。

宛先は九州、島津貴久である。


「このたびは、お祝いの書状ありがとうございます。また島津殿に船を家臣を付けて送りますのでよろしくお願いします。」


長宗我部氏と島津氏の交流は以前からあった。

長浜城攻めの二ヶ月前……、岡豊城で島津貴久家臣、新納忠元と会談した。


「いやいや、国親様自らとは…。」

「いや、こちらこそ島津殿と新納殿にはお世話になっておりまするよ。」

「いよいよ、元親殿の初陣でございまするな。楽しみでございますぞ。」

「ありがとうございます。ただうまくいくかどうか……。義久殿は羨ましいかぎりですわ。」

「きっとうまくいきましょう。成功した暁には元親殿と義久様ともにさらに大きく交流を深めましょうぞ。」

「そう言っていただきありがたい。」


長浜城攻めの三日後には島津氏からお祝いの産物が大量に届いたという。


二年後。


「親光、元親をよんでこい。」

「は。」

「元親。」

「はっ。」

「初陣うまくいきよかったの。これで家督相続は予定通り進められる。私は軍神として長宗我部を……、見守る。」

「ははっ。父上っ!」


長宗我部国親は五十六歳で死去した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る