おれんじじゅーすとちょこ

@rt2008

第1話

夏の昼間、乾いた喉には少しにがいオレンジジュース。にがいと感じながらも飲むのをやめないのはただ喉が渇いているからだろうか。もう少し飲めば。たぶんどこかで淡い期待を持っているんだ。届くわけもないのに無意識に目で追っている自分が確かにいる。たぶんどこかで淡い期待を持っているんだ。冬の夜、口の中でゆっくり溶かすチョコは甘くてこころなしか頬が緩む気がする。もう少し欲しくて欲張り過ぎかと思って。バイバイと君の背中に手を振る。もう少し欲しくて欲張り過ぎかと思って。


頭の中ではいつもきみとの会話のシュミレーションをして、自分に都合のいい妄想ばっかりして、今日は少し気合を入れてお気に入りのリップクリーム塗って、鏡の前で笑顔の練習もして、きっと私だけだけどたぶんひとりで浮かれてるだけだけど少し期待してもいいかな。


いつもと同じはずなのに教室はどこかさみしそうで、制服には誇らしげにうすピンクの花が咲いている。卒業アルバムの寄せ書きのスペースには私の期待が隠れきれていない、少しでいいんだ。私は昨日食べたチョコの味を思い出しながら、淡い期待を抱きながら教室に背を向けた。

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