第10話 え? まだ戦いは終わらないの? 嘘でしょ?

 今日は放課後に上手くタイミングが合ったので、2人で下校する事になった。最初は他愛もない雑談だったのだけど、ふと疑問が浮かんだ私はまるむの顔を見る。


「ねぇ、まだミルミはいるの?」

「いるよ。どうして?」

「だってもう敵はいなくなったんでしょ? 魔法少女も終わったじゃん」

「そうだ! そのことでミカに話さなきゃいけない事があったんだ!」


 彼女は昨夜ミルミから新しいメッセージを受け取ったのだとか。このいきなりの流れに私の目は点になる。

 その内容は、ルーシルの巫女に「舞鷹市が近い内にまた別の勢力に狙われてしまう」と言うお告げが降りたと言うもの。つまり、魔法少女の戦いはまだ終わらないって事なのだ。


「そっか。また戦いの日々が始まるんだね」

「協力してくれる?」

「当然だよ! 街を守らなきゃ!」


 私は拳をギュッと強く握って、みなぎる闘志をまるむに見せる。そんな私の姿を見て、魔法少女の先輩はフフッと軽く笑った。


「もうすっかりベテランの魔法少女だね」

「そりゃ当然でしょ。でも敵ってどんな勢力なんだろ? 強いのかな?」

「そこだよね。あたしもまた続報待ちなんだ」


 どうやら、まるむも新勢力についてはまだ何も知らされていないらしい。未知なる戦いに緊張している私達の前に、ミルミが音もなくやってきた。


「話は聞いたみたいだね。悪いけどミカ、また協力してくれるかい?」

「それはいいけど、敵ってどう言うヤツらなの?」

「それはボクもまだ知らないんだ。不安かい?」

「まぁ、ちょっとは……」


 私が不安を吐露すると、猫聖霊はニヤリと目を半円に歪め、ぐぐっと口角を上げる。まるで何かを企んでいるような顔だ。私はこの流れにゴクリとつばを飲み込む。


「そんな君達に朗報だ。新しい仲間を紹介するよ」

「えっ?」


 ここに来て新しい仲間の加入? しかもミルミ側からの紹介って……。なんだか嫌な予感がする。一体どう言う人なの? 仲良くやっていけるの?

 謎と不安の渦巻く中、その人物は姿を表した。しかも、そのシルエットはどこか見覚えがあるような――。


「ふふ、お久しぶりね。よろしくしてあげても良くってよ」

「「フレシア?!」」


 そう、新しく仲間になると言うのは、帝国四天王のフレシアだった。先の戦いでの働きが認められて3人目の魔法少女になったのだとか。元敵幹部だけに、その衣装は黒を基調にしている。闇の深い衣装がとても似合っていた。敵が味方になるってシチュはテンプレだけど、ここまでベタな事になるなんて。

 この新メンバーの正体を知ったまるむは、呆れたように肩をすくめる。


「何となくこうなるだろうなって気はしてたよ」

「フレシアさん、私が先輩ですからね!」

「リーダーは実力で決めてくださらないかしら? そうなると、当然私がリーダーで決まりですわよね?」


 数が増えた途端、誰がリーダーかで口論が始まってしまった。普通に考えて、リーダーはまるむ以外に有り得ないのに。新規加入したと同時にマウントを取ろうだなんて、やっぱり私この人とは合わない。敵として会いたかったよ。

 しかも、まるむはフレシアがいいならリーダーを譲るって雰囲気を出してるし。


「リーダーはまるむだよ! 私達に負けたくせに勝手に奪おうとしないで」

「はい? タイマンなら負けませんでしてよ? 今から白黒ハッキリつけます?」

「ちょ、2人共喧嘩はやめ! もう仲間なんだから」


 まるむが仲裁してくれたので、私は矛を収める。フレシアの方は、腕を組んで何故だかドヤ顔だ。私、この3人でこれからうまくやっていける気がしないんだけど、大丈夫かな。私達の息の合わなさに、ミルミも頭を抱えている。

 ここで、空気を読んだまるむが私達の顔を交互に見つめてきた。


「取り敢えずさ、こうして揃ったんだし、親睦会しようか」

「じゃあ、カラオケとか?」

「いいですわね! 歌なら負けませんでしてよ!」


 調子に乗ったフレシアが勢いに任せてトンデモ発言をかましたので、私はすぐにツッコミを入れる。


「フレシア、日本の歌知ってるの?」

「ま、まだ歌えませんけど、きっと覚えますわ!」

「よし、じゃあカラオケ行こ!」


 いきなりボロを出したフレシアと私の肩に手を回して、まるむは強引にカラオケ屋さんに向かって歩き出す。この決断力と行動力、やっぱリーダーは彼女で決まりだよ。フレシアなんてポッと出はしばらくは見習いでいいくらいだよ。

 カラオケは予想以上に盛り上がり、フレシアは私が歌った歌い方を正確にトレースする。音痴部分まで真似されてしまい、すごく恥ずかしかった。


「こう言う歌い方でいいんですのよね?」

「わざと音程外さなくていいからっ!」


 カラオケ屋さんからの帰り道、まるむは上機嫌でフレシアに声をかける。


「フレシア、やるじゃん。これからよろしくね」

「私がいて良かったと思わせて差し上げますわ」

「足は引っ張らないでよね」

「そっちこそしっかりしてくださいね、セ・ン・パ・イ」


 うう、バカにされているような気がする。や、完璧バカにされてる。私は肝心の魔法少女ではボロを出さないようにしようと強く誓った。帰ったら魔法の自主練をしなくちゃ。絶対スゴイって言わせてやるんだから!


 こうして、街を守るスリーマンセルの魔法少女活動はスタートする。私達は人知れず街を守る正義のスーパーヒロイン。でも、その正体は絶対に秘密なんだ。



(おしまい)

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魔法少女にさせられて にゃべ♪ @nyabech2016

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