第9話 え? そんなどんでん返しってアリなの?!
そして、発射された邪悪なエネルギー波によって私達は真っ黒な消し炭に――ならなかった。何故なら、杖が振り下ろされた瞬間に蓄積されていた魔力の塊が消失したからだ。私はまぶたを強く閉じていたけど、力が消えたのは感覚ですぐに分かった。一体何が起こったって言うの?
この異常事態には、流石の偉大なる魔導帝王も戸惑いの表情を見せる。
「何……だと……?」
「魔導書の力を封じたのですわ。2人共危機一髪でしたわね」
私達のピンチに颯爽と現れたのは四天王のフレシア。その意外すぎる人物の登場に私は唖然としてしまったのだけれど、まるむは逆にニヤリと計算通りみたいな表情を浮かべている。
きっと2人で何か秘密の計画を練っていたんだ。何で私だけ除け者にされていたんだろう。普通にショックだよ。
「どう言う事?」
「ミカには話してなかったっけ? 帝王は安全策で力の源の魔導書を宝物庫に隠してあったんだよ。フレシアにはそれを探してもらっていたんだ」
「へ、へぇ……」
つまり、私達が帝王と戦っている間に、フレシアは宝物庫から魔導書を見つけ出して、その力を封じたと言う事なのだそうだ。敵を騙すには味方からかぁ……。それで、私達を倒す事だけに集中したルギュターは、まんまと大事なお宝をを奪われちゃったと。
魔導書の力を封じて形勢が逆転したところで、まるむはニヤリと笑う。
「ダメじゃない。大事なものは持ち歩いていないと」
「ぐぬぬ……」
煽られてヤケになった帝王は、自身の残存魔力で私達に対して攻撃を再開。しかし、怒りもあってその狙いはブレにブレ、私達に直撃する事はなかった。避けに専念した事で、やがてルギュターの魔力も底をつき始める。
その隙を感じ取ったまるむは、狙い済ましたかのように最強魔法を繰り出した。
「世界樹の裁き!」
帝王は床から伸びてきた巨大な樹に絡み取られ、身動きが出来なくなる。しかも、樹から発する聖なる力が王の攻撃の意志を抑え込み、安らぎの香りで眠らせてしまった。もうそこに余裕たっぷりだったラスボスはいない。
ルギュターを完全に無力化出来たところで、まるむが叫ぶ。
「ミカ、仕上げは任せた!」
「か、火炎龍の業火ッ!」
唱え終わったと同時に、私のステッキから無数の火球が生成されてターゲットに向かって飛んでいく。それらは全て直撃し、ルギュターは火達磨になる。火炎は魔力を奪い尽くし、魔力を失った帝王はその体の大きさを人間の幼児サイズまで縮ませてしまった。これでもう野望は抱けないだろう。
魔法で生成した世界樹が消えると、元帝王だった男の子はバタリと床に倒れた。
「死んじゃった?」
「まさか。気を失ってるだけだよ。後はルーシルの人達が何とかやってくれる。お疲れ!」
まるむが手を出してきたので、私は意図を読んでハイタッチ。バトルも終わって落ち着いたところで、そこにフレシアもやってきた。そう言えば、この人もいたんだっけ。
彼女はこれでもかってドヤ顔で、フンスと鼻息を荒く吐き出す。
「2人共、私に感謝するんですのよ! あなた達の命の恩人なんですから!」
「分かってる。有難うフレシア」
まるむはにっこり笑顔になって、フレシアと固い握手を交わした。うわ……何この疎外感。私だけの部外者みたいじゃん。まるむのパートナーは私だよ? フレシアなんて敵でしかないのに。しかも自分の組織裏切ってんじゃん。どっちが信頼出来るかって話だよ。
段々ムカついてきた私は思わず声を荒らげた。
「何で私には作戦とか教えてくれなかったの!」
「計画を思いついた時、たまたま2人きりだったのよ。説明しなくてごめんね」
「あなた、あんまり頼りにされていないんじゃなくて?」
「なぁーんですってぇーっ!」
怒り狂って殴りかかろうとしたところで、まるむに止められる。フレシアはわざとらしく怖がるフリをしながら私達の前から軽い足取りで去っていった。何あの態度。今後、また敵になったりしないかしら?
あ、でもそうなったら返り討ちに出来るからその方がいいかも。
「ふん、今度会う時は敵同士だからね!」
「ミカ、それ敵側のセリフ……」
まるむに呆れられつつ、これでちゃんと場も収まった。後始末は神聖国のスタッフに任せて、私達は地球に帰還する。ラスボスを倒すと言う目的も達成し、私もかなり成長出来た気がするよ。これにて一件落着だね。
帝王が倒され、魔導帝国の野望は潰えた。舞高市に平穏な日々が戻ってくる。魔法少女に報酬はないけど、この平和が一番のご褒美だよ。
それからの私は普通に学校生活を満喫する。授業を受けたり、放課後に遊んだり、テストで苦難に立たされたり。魔法少女活動があったから部活辞めちゃったんだよね。また何か部活始めようかなぁ。
同じ学校に通っているまるむとは、今でも魔法少女抜きで友達付き合いをしている。クラスが違うからたまにすれ違う事もあるけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます