第8話 え? 魔王強すぎなんですけど! 無理なんですけど!

 まるむは自信たっぷりにグッと胸を張る。まぁ四天王も余裕で倒せたもんね。城の警備兵だって実力はアレ以下だろうし。数で押し切られなければ、攻略も難しくない気はする。こっちは城の間取りだって把握しているしね。

 私が緊張で武者震いしていると、まるむにバシッと背中を叩かれた。


「ここまで来たんだから、自信持って! ミカも強いよ。私が保証する」

「ありがと。勇気出た」

「じゃ、行くよ! 私に続けー!」


 まるむは意気揚々と先行する。私もすぐにその後をついていった。私達の行方をさえぎる兵士も次々に現れたものの、まるむの魔法で呆気なく倒されていく。こんなに楽勝でもいいんだろうか? だってこの城ってラスボスが待つラストダンジョンみたいなものだよ。もっと激しい攻防戦があってもおかしくないのに……。

 もしかして、私達がレベルを上げすぎちゃった? バランスブレイカーじゃん。まぁ怪我するのは嫌だからこれでいいけど。


 ボスの部屋までのルートを完璧に覚えているらしいまるむは、最短ルートを選ぶ事で想定被害を限りなく減していく。流石は魔法少女の先輩だ。私がメインで進んでいたら、きっと迷いまくっていただろうな。私、方向音痴だから。そんな訳で、私達はほぼほぼ無傷で帝王のいる玉座の間に辿り着く。

 その部屋では、不遜な顔でふんぞり返って玉座に座る帝王ルギュターがいた。話に聞いていた通り、身長はバカでかい。多分5メートルはある。見上げちゃうよ。威圧感が半端ない。こんなのと戦って無事で済む訳ないよ。


 そんな帝王は、私達がやってきた事で玉座からゆっくりと立ち上がる。そうして、アポなしでやってきた侵入者の私達をギロリとにらみつけてきた。


「フン。魔法少女よ、よくここまで来たな」

「あたし達は別にあなたを倒しにきた訳じゃない。力の源の魔導書を渡して!」

「ここまでやっておいて何を言うか。魔導書は余を倒して奪い取るんだな」

「やっぱり……話し合いでは解決しないのね」


 こうして、私達魔法少女の最終決戦が始まる。まるむの言っていた魔導書って言うのはよく分からないけど、きっとアイツの弱点的なものなのだろう。流石のフレシアも帝王についてはあまり情報を持っておらず、私達も今までのように弱点を突いた攻撃は出来なかった。

 初手で決定的な一撃を与える事が出来ず、私達は防戦を強いられる。


 ルギュターは自身と同じスケールの巨大な杖を握っており、そこから繰り出される魔法は今まで私達が受けてきた攻撃のどれよりも威力が大きかった。それだけじゃなく、発動スピードも早い。

 よって、その強さは桁外れであり、十分に強くなったはずの私達が手も足も出ない。全力で避けても気を抜くと魔法がヒットするので、徐々に体力を削られていく。


「先輩、コイツ強いです」

「ラスボスだもの当然よ。あいつは無限の魔導書ってのを使ってて、つまり最強魔法を使い放題。マトモにやっても勝てない」

「そんなあ……」

「フハハハ! ルーシルの魔法少女も余の敵ではないわ!」


 ルギュターは紫色の電撃魔法を巧みに使いこなす。電撃なので光の速さだ。だから狙いを先読みしないと感電してしまう。この魔法攻撃によって、私達はあれよあれよと部屋の隅に追いやられてしまった。もう逃げ場がない。ヤバい。何で最高権力者がこんなに圧倒的に強いの~。これだから武闘派ボスは嫌い~。

 私達が壁に背を付けたところで、帝王の持つ杖に嫌なエネルギー集まってくのを感じ取る。やばい予感を感じた私はまるむに話しかけた。


「ねぇ、あのバカでかい杖。むちゃくちゃ力が溜まってってない?」

「あの力の蓄積……多分極大魔法を打つ気ね。アレが直撃したら、きっと私達ですら一瞬で消し炭になる……」

「ちょ、嘘でしょ?」


 追い詰められた状態で、更にラスボスの最強魔法が追い打ちをかけてくる。この状況に、私は頭の中が真っ白になった。体もガタガタと震えが止まらない。逃げたいけど、逃げられそうにない。これ、どうしたらいいのぉ~っ!

 テンパっている私達を見ろしながら、ルギュターはぐにゃりと表情を歪ませた。


「中々楽しい児戯だったぞ。では、トドメだ!」


 凶悪な笑みを浮かべながら、彼はゆっくりと杖を振りかざす。その強大過ぎる魔力に戦意を完全に失った私達は、力の限り叫ぶ事しか出来なかった。


「「キャアア!!」」

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