第27話 ギルド

 翌日は休日で学校が休み。

 『グルメ研究クラブ』の面々は冒険者として活動するために、冒険者ギルドへと向かうことにした。


「おお、ここが『ラムダラ』の冒険者ギルドか……」

「がうぅ」


 魔法学校が存在する街である『ラムダラ』は、王都へと物を運ぶ交易の拠点でもある。

 そのため街全体が発展しており、それに比例するように冒険者ギルドもデカい。

 三階建ての木組みの建物を見上げて、クロードは感動から息を吐いた。

 今さらながら、本当に異世界に生きているのだと実感する。


「なにをしているの、さっさと行くわよ」

「あ、あぁ」


 アイラに呼ばれて、クロードはギルドへと入っていく。

 冒険者ギルドは、冒険者の登録、依頼の受注、仲間の募集ができる場所だ。

 酒場も併設されているため、酒をあおりながら肉にかぶりついている冒険者も居る。


「美味しそう……じゅるり……」

「がうぅ……」

「今日はご飯を食べに来たんじゃないからな?」


 メアリーとショパンがよだれを垂らし出したので、ショパンは抱えて、メアリーは首根っこを掴んで奥へと連れて行く。

 ギルドの奥には、いくつもの窓口が並んでいる。

 あそこで各種手続きを処理して貰えるのだ。


 少し遅い時間に来たおかげかギルドは空いている。すぐに手続きは始めて貰えるだろう。

 クロードたちは真っすぐ窓口に向かった。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「冒険者登録をお願いします」

「分かりました。登録には手数料として銅貨三枚が必要です。登録用紙への代筆を依頼する場合は、追加で銅貨一枚が必要となりますのでご注意ください」

「大丈夫です」


 窓口では登録がすいすいと進んで行く。

 なんとも、慣れた動作だ。学生の登録が多いため、きっと慣れている動作なのだろう。

 ちなみに、他のメンバーも開いている窓口で登録を済ませている。

 登録はあっという間に終わりそうだ。


「はい。登録用紙へのご記入ありがとうございました。少々お待ちください」


 クロードは用紙への記入を終えると、ちらりと隣を見た。

 アイラがサラサラと紙にペンを走らせている。

 ……そういえば、アイラって王族だけど冒険者として登録できるのだろうか。

 クロードの心配は当たっていたらしい。

 アイラが用紙を渡すと、受付を務めていた職員がギョッと目を見開いた。


「えっと……『アイラ・モルト・ドラクロア』様でお間違いないですか……」

「ええ、間違いないわ」

「あのぉ……あからさまな偽名は問題になる場合もあって……」

「本名よ。なにかしら、私が冒険者として登録してはいけないの?」

「い、いえ。少々お待ちください」


 アイラの担当をしていた職員は紙を持って奥に引っ込んでしまった。

 ……アイラの登録は少し時間がかかりそうである。


 アイラの登録がごたついている間にも、クロードの冒険者登録は問題なく進んだ。

 クロードが登録を終えて、ギルドの掲示板を見ているとメアリーとルシアンがやって来る。


「アイラはまだ時間がかかるようだ」

「そうだな。待ってる間はのんびり掲示板でも見てるしかない」

「むーん。良い依頼はどれだろう……」


 ギルドの掲示板にはモンスター討伐や、モンスターが出現する危険な地域での資源回収などの依頼が張られている。

 大抵のモンスターには値段が付く部位があるが、効率的に稼ぎたいのならば掲示板を参考に依頼を受けたほうが良い。


「お、これなんかどうだ? 『サンダーブルの角が欲しい』。角はどうせ食えないし、サンダーブルって牛みたいなヤツだろ。美味しいんじゃないか?」


 サンダーブルは電気をまとって突進してくるデッカイ牛である。

 ゲームでは序盤で戦うモンスターで、相性を意識すれば簡単に倒せる敵のはずだ。


「サンダーブルの肉はパチパチとした食感が楽しい。ただし、調理する時には感電に注意。厚手の革手袋が必須」

「た、食べたことがあるのか……流石はメアリーだな……」

「がうー♪」


 どうやら、メアリーはすでに試食済みらしい。

 調理時の注意点まで教えてくれた。

 ショパンも食べてみたいようなので、冒険者として最初の仕事はサンダーブル狩りで良いだろう。


「あのー、ちょっと良いですか?」


 掲示板を見ていると背後から声をかけられた。

 誰だろうと振り向くと、駆け出しの冒険者らしき女子。クロードたちと同じ魔法学校の生徒かもしれない。

 女子はクロードの頭に乗ったショパンを見つめていた。

 はにかんだ笑顔から察するに、ショパンに興味があるようだ。


「とても可愛いモンスターちゃんですね。もしかして、使い魔ですか?」

「そうですよ。ドラゴンの使い魔です。ショパンが許してくれるなら、触ってみますか?」

「がうがう♪」

「わぁ、ありがとうございます!」


 ショパンは『良いよー♪』というように、パタパタと宙を飛んで女子へと近づいた。

 女子はそっとショパンの頭を撫でる。


「うわぁ、ふわふわですね!」

「やたらと俺の風呂にくっ付いてくるからなぁ……」

「がうがう!」


 ショパンは自慢気にくるりと回る。

 『全身ふわふわだぞ!』とでも言いたいのだろう。


 そうしてショパンと女子がたわむれていると、ギルドがざわざわと騒がしくなる。

 ショパンについて話しているようだ。

 『可愛い!!』『俺も使い魔が欲しいなぁ』などと聞こえてくる。

 異世界でも『可愛い』の強さは変わらないらしい。


「っち。雑魚が調子に乗りやがって」


 しかし、ショパンの事を気に入らない奴も居るらしい。

 ひょろりとした長身の男が、クロードたちを睨んでいる。

 男の隣では薄汚れた犬型のモンスターがうなだれていた。

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モブに転生したら、ペットの柴犬が裏ボスに転生してました~最強ドラゴンと求めるほのぼの学園ライフ!!~ こがれ @kogare771

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