魔法少女ロゼッタちゃん!

たると

魔法少女だからって少女だと思うなよ

  誰かが俺を呼んだ。

 背筋をつうっと撫でられるような嫌な感覚に、思わず自転車を押すのをやめて立ち止まる。

 恐る恐る振り返った先にはビルの壁に設けられたスクリーンがあった。

 そこに映し出された少女の姿に、ひき殺されたカエルのような声が出る。


「……げ」


 輝かしい金から愛らしい桃色へとグラデーションのかかった、豪奢に波打つ髪。絡みついた茨と白いバラが、彼女の存在感を上品に増していた。

 甘いピンクの大きな瞳は一粒の宝石がごとくきらめき、長い睫に縁取られている。

 くっきりと二重の刻まれたまぶたの上、優雅なカーブを描く眉は、今は凜々しくひそめられている。


 三百六十度どこからどう見ても完全無欠の美少女な彼女は、どこかのビルの屋上で怪獣と相対していた。

 美少女の華やかさを引き立てる膝丈のドレスが、強い風に靡いている。

 義憤に駆られているような表情を浮かべ、怪獣を睨みつけていた彼女が、バッと手を掲げた。


 とっさに耳を塞ぎかけるが、その花のような唇から紡がれる声は聞こえない。

 がなるビル風がかき消してくれたようだ。

 ほっと胸を撫で下ろしている間に、どこからともなく集まってきた光の粒が美少女の手の中で剣を形作る。

 可愛らしい装飾のほどこされた、しかし華奢な彼女に似つかわしくないほど大ぶりな剣。


 見るからに重そうなそれを、彼女は軽々と振り上げた。

 刃が怪獣を切り裂く。

 瘴気と悲鳴をあげて消えていく怪獣に背を向けた美少女が、カメラに気が付いた。

 近づいてくるカメラに、彼女は照れ臭そうに微笑んだ。

 先ほどまでの凜々しさが消えた、年相応のはにかんだ顔。


 それを大写しにして、映像が途切れた。どこかのスタジオの風景に切り替わる。

 ぶるぶる震えながらスクリーンを見上げていた俺は、とうとう叫び声をあげた。


「あぁぁあぁ~……ッッ!!」


 ぎょっとした周囲の視線が刺さるが、構っていられない。

 自転車のハンドルにぶら下がるようにしゃがみこむ。

 キツいキツいキツいキツい。

 俺の心境を知りもせず、アナウンサーが明るく言った。


『今ティーンの間でもっとも人気の魔法少女、ロゼッタの映像でした』


 やめてくれ。ほんっとうにやめてくれ、頼むから。

 名前が聞こえたからって立ち止まるんじゃなかった……!!


 通学カバンにぶら下げた小さいウサギのぬいぐるみ……に扮した妖精、ラビルーがすぐそばにいる俺にしか聞こえないような声で囁く。


「ロゼッタ、早く行かないと遅刻するラビよ~?」

「やめろバカっ!! 俺は森健人だ!!」


 あんまり大きく叫んだからか、「けんとだー」「けんとだー、」「けんとだー……」とエコーがかかった。

 通勤、ないしは通学途中の人たちの視線が数を増し、その眼光が更に生温いものへと変わっていく。

 だんだんいたたまれなくなってきて、俺はそそくさと早足に学校へと向かった。


 ◇


 この世界には人々を襲う『怪獣』と怪獣から人々を守る『魔法少女』が存在する。

 魔法少女になれるのは妖精から選ばれた少女のみであり、少年が選ばれることなどない。


 ない、のだが。


 なんの因果か、正真正銘男である俺、森健人は魔法少女として選ばれてしまった。

 俺を選んだ妖精、ラビルーは素質があるだのなんだのと言うが、正直自分のミスをそういうことにしてごまかしているようにしか思えない。

 一度魔法少女を選んでしまうと、次に魔法少女を選べるようになるのに時間がかかるらしいし。


 ちなみにロゼッタという魔法少女名は妹が好きなアニメからとったものだ。早く決めないと本名で登録することになると脅されて焦った。

 幸い変身すると女子になれるおかげで今のところ誰にも俺がロゼッタだということはバレていない。が、何かの拍子にバレてしまったらと思うとゾッとしなかった。


 遅刻ギリギリで教室に滑り込んだ俺はため息をつく。

 爆走する自転車のかごの中で揺らされまくったラビルーは目を回していた。

 気にすることなく机横のフックにひっかける。

 そのタイミングで俺に声をかけてくる女子が一人。


「今日もギリギリじゃん。もうちょっと早く家出なよ」

「ほっとけ」

「いよいよ遅刻しておばさんに怒られても知らないよ」

「ほっとけ!」


 茶色のボブカットを揺らしてニヤニヤしているのは幼馴染みの相川仁花あいかわひとか

 家がすぐ隣で幼い頃から一緒に育ったせいか色々と世話を焼こうとしてきたりおせっかいしてきたりする。


 だがまぁそんなのは本当にどうでもいいことで、一番問題なのは……

 ついうっかりため息をつきかけたところで、仁花が「あ、そうだ!」と大声をあげた。


「健人、昨日のロゼッタちゃんの中継見た?」

「ぐふっ!」


 心臓吐くかと思った。

 そう、こいつは『魔法少女ロゼッタ』のファンなのだ。


 一回助けられてからもう夢中! らしくことあるごとに俺のところに来てはロゼッタの話をしていく。勘弁して欲しい。俺以外に友達いないのか。


 確かに助けた覚えはある。ただしめちゃくちゃ初期の話でかなり不格好だった。その上相手が知らぬ人間ではなかったせいで動揺し、ヘマまでした。

 助けられた仁花としては素敵な思い出なのだろうが、助けたこっち側としてはさっさと忘れて欲しいような失態だ。


 頭を抱えてもだえる俺のことなどお構いなしに仁花はペラペラ喋る。


「いやー、やっぱりロゼッタちゃんって最っ高に可愛いし綺麗だし強いよね! ちょっと前までは他の魔法少女に埋もれがちだったのに今じゃすっかりティーンの中の一番人気にまで躍り出ちゃって、なんていうか鼻が高いっていうか? でもちょっと寂しいっていうか~」

「……」

「ザ・お嬢様って見た目なのに魔法より体術メインなのがまたいいよね! ギャップ萌え~! 特に今回は凜々しい眼差しで怪獣をぶった切っちゃってて、かっこよすぎ!? って感じ! 私もロゼッタちゃんみたいになりたいな~。とりあえず髪染めてみよっかな、健人どう思う? ていうか聞いてる?」


 返事をしない俺に、仁花がわざとらしく頬を膨らませた。

 仕方なく答える。


「ぜってぇ似合わねぇよ、あんな中に桃太郎入ってそうな髪色。マジで勘弁してくれ」


 俺としてはそのマシンガントークをやめてくれ、という意味で「勘弁してくれ」と言ったつもりだったのだが、仁花には違う意味で伝わったようだ。

 目が三角に吊り上がる。頬は膨らませていない。そう、人間本当に怒ると頬を膨らませるなんてことやっていられないのだ。


「ひどぉい! あの輝かしい金から愛らしい桃色にグラデーションのかかった髪をそんな風に言わないでよ! 絡みついた茨や白いバラがアクセントになっててとっても可愛いんだからっ!」


 怒んのそこかよ。知ってたけど。


「あいつの髪の話はしてねぇ。髪色の話をした」

「ロゼッタちゃんをあいつ呼ばわりしないで。健人、変なとこでロゼッタちゃんに馴れ馴れしい」

「へいへい、悪うございましたねぇ……」


 馴れ馴れしいもなにも俺だっつーの。

 さっきつきそこねたため息をつくと同時に先生が教室に入ってきた。


「お前ら、さっさと座れよー」という言葉に、仁花もロゼッタトークを切り上げ、あたふたと席に戻っていく。

 カバンにぶら下がったままのラビルーがぼそりと呟いた。


「相変わらず仁花ちゃんはロゼッタが大好きラビねー。健人は報われないラビ」

「どういう意味だテメェこら。絞るぞ」


 町中で叫んでしまった反省を活かしてこそこそ言い返すとラビルーは器用にこっそり肩をすくめた。


「いっそロゼッタは俺だってバラしちゃえばいいラビのに」

「んなことできるか。あとその無理やり『ラビ』いれるのやめろ。なんか腹立つ。せめて語尾だけにしとけ」

「ラビラビラビラビー」

「テンメェ……!」

「おい森、うさちゃんが好きなのは分かるがホームルーム中は愛でるのやめろー」


 先生の注意に教室がドッと沸く。

 縮こまる俺をよそに素知らぬ顔をしているラビルーはしっかりと握りつぶしておいた。


 ◇


 放課後。

 帰る支度をすませて立ち上がった俺の元に仁花がやってくる。


「健人、いっしょに帰ろ」

「はいはい」


 他愛もない話をしながら駐輪場まで行き、俺のではなく、仁花のカバンをかごに放り込んだ。仁花は徒歩なので手持ち無沙汰そうに俺が自転車を出してくるのを待っている。


 朝は俺がギリギリまで寝たい人間のせいで別々だが、帰りは予定がない限り一緒に帰るのがお決まりになっていた。

 まぁまず家が二軒となりとかだから別々に帰っても結局同じ事なのだが。


 朝から見たくもないロゼッタの姿を見せられ、幼馴染みのマシンガントークを浴びせられ、ついでに笑いものにされた俺はくたくただった。

 隣を歩く仁花はまた楽しそうにロゼッタの話をしている。


「あーあ、うちの学校もロゼッタちゃんの管轄内だったら良かったのにー」

「さすがにそれはロゼッタの負担すごすぎるだろ」


 今でも十分キツいんだ。心身共に。だから学校の連中にバレるリスクが上がるような恐ろしいことを言うな。

 魔法少女にはそれぞれ管轄地区があり、その外では基本変身ができない。

 もっと怪獣達の数が多かった魔法少女黎明期に起きた縄張り争いのせいで出来た措置らしい。


 一応なんらかの原因で一つの地区に怪獣発生の数が偏ったときやよっぽどの緊急事態のときは変身を許可される。

 ……が、そもそも変身なんて怪獣が出てきたときしかしなくないか? それは緊急事態には換算されないらしいし。いや換算しろよ。アホか。


 肩にひっかけたカバンから、ラビルーがぼそぼそ言った。


「それも全部換算しちゃうと他人の管轄も巡って怪獣をやっつけようとする子や、逆に他管轄の魔法少女がなんとかしてくれるってサボる子も出てきかねないラビ」


 言われてみれば確かに目立ちたがりとかサボりたがりがそうする可能性もあるのか。うん、俺もそうするかも。主にサボる方向性で。


「あと、健人は真逆ラビけど、なにかと変身したがる子もいるラビ。目立ちたいとかだけじゃなくて、早く帰りたいとかの理由で。ラビ」


 ついにキャラ付けの語尾ラビが添えるだけになった。


 そりゃ変身すりゃ全体的に身体能力が向上するけど、そこまでして早く帰りたいか? 俺が変身するのが嫌すぎて思いつきもしなかっただけなのか?


 ちなみに魔法少女の管轄は基本的に彼女らの自宅を中心として決められる。一般人は知らない。知られたら魔法少女の家を探しだす変態が現れるからな。


 俺たちが通う学校は家からそれなりに離れているためロゼッタの管轄からはどうにか逃れられている。やったぜ。


 俺の気も知らずに、仁花はまだ言っている。


「だってさー。自分の学校に怪獣が現れて、みんなが大ピンチ! ってなったときに颯爽と現れるロゼッタちゃんなんて素敵すぎるじゃない?」

「やめろそんなタイミングで襲われたくねぇ」


 実際そうなったら管轄とか関係なく確実に一番近い俺が変身しなきゃいけねぇだろうが。あ、いやこいつはロゼッタに会いたくて言ってるんだから間違いじゃないのか……? いやいや、間違いじゃなかったとしてもそんなの悪夢だ、嫌だ。


 仏頂面になった俺を、仁花が覗きこんできた。


「ねー健人。健人ってさ、ロゼッタちゃんのこと嫌い?」

 びっくりして思わずブレーキを強く握る。キィッと耳障りな音がした。

「なんで?」

「だっていつもロゼッタちゃんの話したら嫌そうな顔するし」


 そりゃそうだろ。つーか分かってるなら別のやつに話せ。


「いつも素っ気ないとこあるけど、もっと素っ気なくなるし」


 ボロ出しそうで嫌なんだよ。ていうか話を切り上げたいからだよ。

 頭の中でいちいち言い返していると、仁花の目が細められた。


「それにロゼッタちゃんにはなんか言葉がキツい。冷たい」

「……なことねーよ」


 答えるのに少し間が開いてしまった。


 別に、ロゼッタになるのは嫌だが、ロゼッタのことが嫌いなわけではない。

 俺では絶対に助けられない人たちを助けられるし、人気だし、仁花が言う通り可愛くて綺麗で強い。

 その正体が自分でさえなければ憧れてすらいたかもしれない。


 ハンドルを握る手に力がこもる。

 でも結局、ロゼッタはどこまで行っても俺なのだ。

 なのに賞賛を浴びるのはロゼッタだけで、仁花が助けてもらったと感謝するのもロゼッタだけ。

 それがムカつくときがある。

 自分でもどうかと思うほど醜い嫉妬だ。


 俺の気も知らず、前をむき直した仁花がぽそりと言う。


「私の好きなロゼッタちゃんを、健人が嫌いなのは寂しいよ」

「……」


 一緒じゃなきゃイヤ! とだだをこねる幼稚園児のような理屈。

 だが仁花は本当に寂しそうだった。

 なにか言葉をかけようと思った、そのとき。


 ドシン、と嫌な振動が俺たちを揺らした。


 仁花が悲鳴をあげてよろめく。

 バッと顔を上げると、そこには、


「怪獣……!」


 そこまで大きな個体ではない。人と同じか、もう少し大きい程度。

 それだけなら影のように真っ黒な肌や、その身を包むもやにさえ目をつむれば人に見えるかもしれない。

 しかし奴の背中からは無数の腕が生えていた。


 関節など無いかのように長く伸びる腕が、俺たちの方に伸びてくる。

 ラビルーが焦った声を出す。


「健人っ! ここじゃ変身できないラビ! 管轄のエリアまでおびき寄せるラビ!」

「それはセーフなのかよ!」


 悪態をついて、俺は仁花の手を掴んだ。

 怯えているところを、無理やり自転車の荷台に乗せる。

 俺もすぐさままたがると腰に腕を回させた。


「飛ばすぞ、ちゃんと掴まってろよ!」

「ぁ……、うっ、うん!」


 近くで炸裂した大声にハッとした仁花がしがみついてくる。

 なんか色々柔らかかったり甘い匂いがしたりするが、すべてを意識の外側に追いやって俺は思いきりペダルをこいだ。

 一瞬だけ振り返ると、怪獣は俺たちを標的に定めたらしくのったりと追いかけてきていた。


 あぁっ、のったりしてやがるくせに速いなぁもう!

 どうせ俺の管轄に逃げ込むより先にここを管轄にしてる魔法少女が来るだろうと高をくくっていたのに、ちょっと怪しくなってきたぞ!

 仁花の目の前で変身するのは嫌だ!!


 叫びたくなるのを必死にこらえてただひたすらにペダルをこぐ。

 坂道なのが最悪だ。俺の体育の成績は悪くはないが決して良くもない。変身もしていないのに女一人乗せて何百メートルも坂をこぎ続けられるスタミナはなかった。


 周りで怪獣に気づいた人たちの悲鳴が聞こえる。

 徐々に怪獣の気配が近づいてくる。

 ついに怪獣の手が自転車の後輪を掴んだ。

 そのまま引きずり寄せるのではなくぐしゃりと横向きに振ってきやがる。

 俺と仁花は簡単に自転車から放り出された。


 怪獣はもう目の前。俺の管轄エリアまではまだもう少しある。

 仁花は今ので腰を抜かしたらしく、座り込んだまま怪獣を見上げることしかできないでいる。


「あぁクソッ!」


 とっさに罵り声を上げて今にも仁花に襲いかかりそうだった怪獣に掴んだ砂利を投げつけた。

 ダメージなどゼロに等しかっただろうが、気を引くことはできたらしい。

 怪獣がこちらを向く。

 仁花の前に躍り出て、バカみたいに両手を広げた。


「ふざっけんなよ、このクソ野郎!」


 健人、と俺を呼んだのは仁花なのかラビルーなのか、それとも帰る途中だっただろうクラスメイトなのか、それすらも分からなかった。

 ゆっくりと黒ずくめの手が近づいてくる。

 冷や汗が頬を伝う。目だけは意地でかっぴらいた。


 次の瞬間、空から降ってきた光の球が怪獣をぶっ飛ばした。

 思わず空を見上げると、そこには白を基調とした衣装に身を包んだ魔法少女がいた。細長いステッキを怪獣に向けている。

 俺の前に降り立った彼女は、安心させるようにウインクをかましてきた。


「ナイスガッツ、少年!」

「は、はぁ……」

「私が来たからにはもう大丈夫。よく頑張ったね」

「あぁ……」


 生返事ばかりの俺の胸を一発どつくと、魔法少女は颯爽とまだ倒し切れていない怪獣の方へ駆けていった。

 膝から力が抜けて、その場に座り込む。

 変身できない状況だと怪獣ってこんなに怖いのか。


「健人、大丈夫っ?」

「あ、あぁ、まぁ、うん。魔法少女がなんとかしてくれたし」

「そっか、そうだね」


 妙な沈黙が落ちる。

 周囲に人はいない。みんな魔法少女の活躍を見に行ってしまったのだ。

 なんとなく気まずくて頭をかきながらそっぽを向く。


「お前、見に行かなくていいの。魔法少女好きだろ」

「行けるわけないでしょ! それに私が好きなのはロゼッタちゃんで魔法少女全体じゃない」

「あー……そーね」

「健人、あのさ」

「あんだよ」

「さっき、庇ってくれてありがと」

「……あ?」


 しばらく仁花が何を言っているのか分からなかった。

 ラビルーがこそこそ言う。


「健人に、ありがとうって言ってるラビ。……ラビルーは健人がとっさに誰かを守ろうとすることができる子だって分かってたラビ」


 ぬいぐるみ状態のくせに、見守るような笑顔を浮かべた妖精は「だから、健人には素質があるって言ったラビ?」と続けた。

 それきり黙るラビルーと入れ代わるように、仁花が重ねた。


「とっさに自転車乗っけて逃げてくれたのもありがと。突然だったのにそんな風に動けるの、ちょっとかっこよかった」


 はにかみながら笑いかけてくる仁花に心臓が締め上げられた。

 バクバクわめく鼓動が気持ち悪くて、俺は胸元を握りしめる。


「お、おー、そうかよ……」

「うん、ロゼッタちゃんみたいだった!」

「おーおーそうかよッ!」


 俺のときめきを返せッ!

 怒鳴りつけたいのをこらえていると、にこにこ笑ったままで仁花が言った。


「そうそう、今にも『大輪のバラのように華やかに散らしてあげる!』って言い出しそうだった」

「ぎゃああああああああッ!! やめろおおおおお!」


 ロゼッタが剣を構えるときの口上を高らかに口にされ、俺は今日一番大きな悲鳴をあげた。

 朝は聞かずにすんだのに!!

 ラビルーがやれやれと首を振る。


「観念してさっさと正体バラしたらこういうのもちょっとは減ると思うラビのに」

「バラしてたまるかッ! 墓まで持ってくわッ!」

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